IDC Japanは2023年11月22日、国内におけるソフトウェア市場の実績と予測を発表した。2023年上半期の同市場は、前年同期比で9.5%増となった。「生成AIブームによる企業でのAI活用への関心の上昇」「ソフトウェアモダナイゼーションの要求」「セキュリティインシデントの増加」などの要因が国内企業のソフトウェア投資を押し上げたと分析している。
IDCは、ソフトウェア(パブリッククラウドサービスを含む)市場を3つの大分類、20の中分類、78の機能に分類し、国内市場を含むグローバルなベンダー売上額と市場予測を「IDC Worldwide Semiannual Software Tracker」として提供している。
2023年11月発行のレポートによると、ソフトウェア市場のグローバルでの売上額は、2023年上半期(2023年1月~6月)に前年同期比11.1%増の4525億米ドル。一方、国内のソフトウェア市場は、前年同期比9.5%増の2兆2419億2000万円と推定している(図1)。
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2023年上半期の国内ソフトウェア市場についてIDCは、「生成AIブームによる企業でのAI活用への関心の上昇」「ソフトウェアモダナイゼーションの要求」「セキュリティインシデントの増加」などの要因が国内企業のソフトウェア投資を押し上げ、堅調に成長したと同社は分析している。
なかでも、「データ活用を通じた業務の効率化・自動化」「人的資本投資や環境投資などの非財務側面の強化による企業価値の拡大」「サイバーセキュリティ/ガバナンス対策のためのソフトウェア投資」が2023年上半期に注目を集めたという。また、ソフトウェア市場のなかで、パブリッククラウドサービスの売上は2023年上半期では前年同期比22.4%増の8456億円4600万円と高い成長を維持し、全ソフトウェア市場の37.3%を占める規模となった。
2023年上半期における、3つのソフトウェア大分類の市場トレンドは、以下のように推移したという。
「アプリケーション開発/デプロイメント市場」は、前年同期比13.4%増、5784億8000万円だった。特に、「データドリブン経営推進や業務効率化のためのAI基盤」市場(前年同期比53.8%増)と、「アナリティクス/BI」市場(同18.8%増)が高成長を維持した。
「アプリケーション市場」は、前年同期比8.2%増、9394億9200万円だった。「デジタルCX(顧客体験)向上に向けたCRM」市場(同14.2%増)および「コンテンツワークフロー管理」市場(同12.1%増)が高成長を継続した。
「システムインフラストラクチャソフトウェア市場」は、前年同期比8.3%増、7239億4700万円だった。特に、「サイバーセキュリティ対策/デジタルトラスト向上に向けたセキュリティソフトウェア」市場(同16.9%)および「ITシステム管理」市場(同6.0%)が高成長だった。
IDCは、企業における業務へのAI適用やデジタルCX、企業トラストの拡大に向けたソフトウェア投資は、2024年以降も継続する。国内におけるソフトウェア市場は、2022年から2027年にかけてCAGR(年間平均成長率)8.0%で推移し、2027年に6兆2346億円に達すると予測している。
3つの大分類ごとの2022年~2027年のCAGRは、アプリケーション開発/デプロイメント市場が14.5%、アプリケーション市場が5.3%、システムインフラストラクチャソフトウェア市場が5.5%と見積もっている。
IDC Japan Software/Service Solutionsグループディレクターの眞鍋敬氏は、「2022年末から市場を活性化している生成AIを含むAIブームは、デジタルファースト時代に突入する国内IT市場でのソフトウェア投資にとって阻害要因を上回る促進要因になる。この影響は、AIに関連するデータ管理基盤やコンテンツ管理、セキュリティ、AI組み込み型アプリケーションなどの市場に波及し、同市場をさらに活性化する」と分析している。