[市場動向]

KDDI、暗号化データを復号せず高速に分析可能な技術を開発

次世代技術「完全準同型暗号」を採用

2023年12月11日(月)IT Leaders編集部

KDDIとKDDI総合研究所は2023年12月8日、暗号化されたデータをそのまま高速に分析する手法を開発したと発表した。次世代暗号化技術「完全準同型暗号」を採用し、医療データなど機密性の高いデータを、暗号化された状態のまま操作できるようになる。2030年代半ばでの実用化を目指す。

 KDDIとKDDI総合研究所は、暗号化されたデータをそのまま高速に分析する手法を開発した。次世代暗号化技術「完全準同型暗号」を採用し、医療データなど機密性の高いデータを、暗号化された状態のまま操作できるようになる。

 「複数の事業者・機関にまたがって扱われるデータの活用にあたっては、プライバシーや情報の漏洩に配慮する必要があることから、データを暗号化したまま分析や検索が可能な完全準同型暗号が注目されている」(両社)

 完全準同型暗号では、暗号化時に乱数をノイズとして加えて安全性を確保する。「一方、暗号化したデータを使って演算すると、各データのノイズが累積して処理できなくなるためブートストラップ処理が必要になる。従来の完全準同型暗号は、ブートストラップ処理に要する計算量が大きく、演算時間がかかることが課題だった」(両社)。

図1:完全準同型暗号の利用イメージ(出典:KDDI、KDDI総合研究所)
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 そこで両社は、完全準同型暗号を高速に使う新たな手法を開発。ブートストラップ処理を1.6倍高速化したという。また、完全準同型暗号の基本演算処理も高速化し、標準的な手法と比べて加算で100倍、乗算で60倍高速化を図っている(図1)。

 ブートストラップ処理の高速化にあたって両社は、これまで考慮していなかった代数学的性質を利用する手法を考案した。また、論理演算とブートストラップ処理を同時に実行可能な「プログラム可能ブートストラップ処理」の具体的な構成方法を示し、同時処理で生じる演算処理遅延の低減手法を確立した。

 2030年代半ばの実用化を目指す。「完全準同型暗号が実用化されることで、プライバシーや情報漏洩の懸念なく各種のデータを分析できるようになる。今後、複数機関で扱うヘルスケア情報を活用した新薬開発や、リアルタイムの位置情報に合わせたコンシェルジュサービスなど、新しい価値やサービスの創出にっ取り組んでいく」としている。

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