旭化成(本社:東京都千代田区)は2024年12月9日、材料の新規用途探索や製造現場の技術伝承に生成AIを活用し始めたと発表した。これまでは、書類作成や社内資料検索などの汎用用途に使ってきたが、今後は特定の業務用途にも適用していく。
旭化成は、2023年5月からグループ全体で積極的に生成AIを活用し、業務の効率化を進めている。例えば、書類作成や社内資料検索などの汎用用途にMicrosoft 365 Copilotなどを活用し、業務全体で月あたり2157時間を削減している。同年12月には、社内のシステム開発者に向けて、生成AIを構築・管理・運営する基盤を公開。書類監査のための生成AIを開発した事例では、年間で1820時間の削減をはたしている。
同社は今後、生産性の向上だけでなく、特定の業務用途にも適用していく。例として、材料の新規用途探索や製造現場の技術伝承の用途において生成AIの活用を始めている。
材料の新規用途探索とは、既存の材料や新しく開発した材料について新たな用途を見つけること。従来は、専門性を持つ従業員の調査・分析によって用途の候補を考案し、その中から有望なものを絞り込んでいた。
この新規用途探索において旭化成は、用途を自動抽出するAIと、その中から特に有望な用途候補を抽出する生成AIを開発。活用実績として、文献データから6000以上の用途候補を考案している。ある材料では候補の選別にかかる時間を従来の約40%に短縮したという。
「専門家のアイデアと遜色のない用途候補を短時間で考案することや、より革新的な発想が可能になった。今後、材料化学や医療分野の新規用途探索で活用する。将来的には、他社製品の技術を分析して協業先の選定に活用することも視野に入れる」(旭化成)
一方の製造現場の技術伝承では、主に製造現場における事故や災害を防ぐことを目的としている。熟練社員の高年齢化と退職により、作業前に想定されるリスクを洗い出して対策を図る「危険予知」に関するノウハウの継承が課題となっていたという。
従来は、個人の経験からリスクを予知していたが、新たに、過去事例のデータを読み込ませた生成AIを活用することで、経験の浅い従業員でも抜け漏れなくリスクと対応策を洗い出し、安全性と効率性を高められる仕組みを整えた(図1)。今後は、作業前の危険予知だけでなく、画像・音声など工場の各センサーから取得した非構造化データを解析し、作業中の危険回避にも役立てる予定である。
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