[市場動向]

SOCベンダーの米Arctic WolfがCylanceを買収、製品や顧客基盤を継承し日本市場へ参入

2025年3月10日(月)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

SOC(セキュリティオペレーションセンター)サービスを主力とする米Arctic Wolf(アークティックウルフ)が2025年2月26日に記者説明会を開き、セキュリティベンダーの米Cylance(サイランス)の買収に伴う日本市場への本格参入を発表した。CylanceのEPP/EDRなどのサービスを統合し、事業領域/ポートフォリオの拡大を図る。同社社長兼CEOのニック・シュナイダー氏と日本担当副社長の吉本努氏が登壇し、買収の狙いや日本におけるサービス展開を明らかにした。

 米ミネソタ州イーデンプレーリーに本社を置くArctic Wolf(アークティックウルフ)は、SOC(セキュリティオペレーションセンター)サービスを中核とするセキュリティベンダーである。2012年4月に設立され、従業員数は約3000名、うち800名以上をセキュリティエンジニアが占める。

 2024年12月、同社は米Cylance(サイランス)の資産を、カナダのBlackBerry(ブラックベリー)から取得することを発表した。CylanceはEPP(Endpoint Protection Platform)やEDR(Endpoint Detection and Response)などの製品やマネージドサービスを提供する専業ベンダーで、2016年より日本市場で事業展開し、2019年からはBlackBerryの傘下に入っていた。

 2025年2月4日に買収を完了し、Arctic Wolfは日本市場で本格的に事業を開始する。グローバルでのプレゼンスはすでに大きく、80カ国を超える地域に1万社以上の顧客を持ち、パートナーは2000社以上に上るという。

写真1:米Arctic Wolf(アークティックウルフ) 社長兼最高経営責任者のニック・シュナイダー(Nick Schneider)氏

 登壇した同社 社長兼CEO(最高経営責任者)のニック・シュナイダー(Nick Schneider)氏(写真1)は、ツール、プラットフォーム、運用の領域がサイロ化されていることがサイバーセキュリティ市場の長年の課題であると指摘。3つの領域をすべて統合し、顧客に統一した成果を提供することがArctic Wolfのビジョンだと語った(図1)。

 とりわけセキュリティ運用の領域は、全体的な問題解決に不可欠であるとシュナイダー氏。「ほとんどのセキュリティベンダーは着手しやすいツールの提供で市場に参入しているが、ツールだけではピンポイントな課題解決にとどまる。当社はより困難な運用の領域から事業をスタートし、サービスやプラットフォームを拡充してきた」とアピールしている。

図1:サイバーセキュリティ市場のサイロ化を問題視(出典:ArcticWolf)
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●Next:Cylance買収の狙いと日本でのビジネス展開

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