[事例ニュース]
ダイハツ、AIアプリを実装できる人材を予備知識ゼロから3カ月で育成、開発人材300人を目指す
2025年4月15日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
ダイハツ工業(本社:大阪府池田市)は、AI人材の育成に取り組んでいる。2021年からは、実データを活用した課題解決型の学習プログラムを活用し、これまでに約100個のAI活用事例が生まれている。成果の1つとして、プログラミング経験がない現場担当者が、Pythonを学びながら3カ月半で、塗膜の厚みの測定時間を50%削減するアプリを開発した。学習プログラムを提供したスキルアップNeXtが2025年4月14日に発表した。
ダイハツ工業は、AI人材を「素養人材」(最低限必要なAI基礎知識を持つ人材)、「中核人材」(AIプロジェクトを実装できる人材)、「TOP人材」の3層に分け、段階的に育成している。2021年からは、実データを活用した課題解決型の学習プログラム「AI道場」(スキルアップNeXtが提供)を導入しており、これらの研修によって300人の中核人材を育成する目標を掲げている(図1)。

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学習プログラムのAI道場は、約3カ月のプログラムであり、講師からのアドバイスを得ながら、PoC(概念検証)または実装を完遂し、発表会まで実施する。実際に成果物を生み出すことによって、学びだけで終わらせずに、ビジネスに適用する力が身につくとしている。ダイハツ工業では、AI道場により、これまでに約100個のAI活用事例が生まれたという。
成果の1つが、塗膜の厚みを画像認識で測定するアプリである。
バンパー塗装は塗膜の厚さの規格が決まっていて、プライマ、ベース、クリアという3層の膜厚を適正に保てないと、タレや剥がれなどの不具合が起こる。塗装工程を自動化するために必要な膜厚の測定は、これまで人の手で行っていた。特に、3層の識別は顕微鏡を使って目で見て判断するため、時間がかかるうえに測定者の熟練度により誤差が発生しやすいという課題があった。
今回、塗膜層の識別と膜厚測定を、AIによる画像認識によって自動化した。現場担当者が学習プログラムのAI道場に参加し、プログラミング未経験の状態からPythonを学び、3カ月半でアプリを作成した。教師画像が100枚程度の段階では識別精度が粗かったが、200枚を超えるあたりで実際に使えるレベルに達した。
自動測定アプリの効果として、90カ所の膜厚測定をする場合、これまでは1時間半ほどの作業時間が必要だったが、45分で済むようになり、作業時間が50%減った。また、熟練した技術や経験を持たない人でも、簡単に測定できるようになった。