社会医療法人北九州病院が運営する北九州総合病院(所在地:福岡県北九州市)は、骨折患者の臨床データを国のデータベースに登録する業務にAI-OCRを導入し、これまで最大で30分かかっていた1症例あたりの登録時間を5~6分に短縮した。医療データ登録システムの基盤となったノーコード開発ツール「kintone」を提供したサイボウズが2026年5月29日に発表した。
大腿骨近位部骨折は、骨折から1年後に約1割が死亡し3割強が歩行困難に陥る重篤な疾患で、関連医療費は介護費を含めると約1兆円規模に上るという。国は2022年の診療報酬改定でこの骨折の緊急手術に対する加算を新設し、算定要件としてFFN-J(日本脆弱性骨折ネットワーク)が運用する臨床データベース(レジストリ)への症例登録を義務付けた。現在、年間4万5000件超が登録されている。
北九州総合病院では、年間約250症例をFFN-Jのレジストリに登録している。この登録作業を担うのが医師事務作業補助者(医師クラーク)である。電子カルテの各所に散在する情報を手作業で集めて登録画面に転記する必要があり、慣れない担当者では1症例あたり最大30分かかっていた。
図1:AI-OCRを活用した骨折患者データ登録システムの概要(出典:サイボウズ)拡大画像表示
「データ入力の負担を減らし、データの質を高めること」を目標に、ノーコード開発ツール「kintone」(サイボウズが提供)を基盤とした医療データ登録システムを開発。2025年初頭から実証実験に取り組み、週1回のペースで改善を重ねた結果、1症例あたりの登録時間は5~6分へと短くなった(図1)。
特にデータ入力の負担軽減につながったのはAI-OCRである。電子カルテの画像から必要なデータを自動で読み取り、kintoneに入力できるようになった。画面上で画像とOCR結果を比較できるためミスも起こりにくい。入力データはそのままFFN-Jのレジストリに連携する。
同院副院長の福田文雄氏は、医療経営の構造的な問題を背景に挙げる。「自治体病院の9割、公的病院の7割が赤字経営にある。診療報酬は国が定める一方、人件費や薬品費は上昇しており、業務効率化なしでは質の高い医療を提供し続けることはもはや困難だ」と指摘する。
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