[インタビュー]
セキュリティ/ガバナンス/ROI証明─AI活用の壁を乗り越えて「AIネイティブ組織」へ
2026年7月6日(月)河原 潤(IT Leaders編集部)
人間のチームとAIエージェントが共に働く“AIネイティブ組織”へ──豪アトラシアン(Atlassian)が2026年5月開催の「Team '26」で打ち出したビジョンである。共通データモデル「Teamwork Graph」のオープン化、現場のだれもがAIエージェントを作成できる「Rovo Studio」など一連の発表でこのビジョンを具現化していくという。一方、企業のCIOやITリーダーには、シャドーAIのリスクやデータガバナンス、AI投資のROI証明といった懸案が横たわる。2026年6月16日、アトラシアンのエンタープライズ領域の製品投資を統括するレイ・ワン氏が来日した機会を捉えて、これらの懸念にどう応えるのかを聞いた。
セキュリティの問題解決なくして、企業のAI導入は進まない
──アトラシアンは、チームとAIエージェントが協働して変革を進める「AIネイティブ組織」への移行を訴えています。一方、ユーザー企業では、AIの導入を加速させながらも、シャドーAIのリスクやこれまで管理対象ではなかった領域の権限管理に懸念を抱く向きもあります。現場のAI活用を止めることなく、企業に求められるAIやデータのガバナンスをどのように確立していけばよいでしょうか。
レイ・ワン(Rae Wang)氏(写真1):セキュリティの問題を解決しないかぎり、AIの導入と活用が本格的に進まない──皆がそのことに気づき始めています。実際、私たちが大手顧客にAIがもたらすイノベーションを示すと、皆さん興奮するのですが、最初に返ってくる言葉は決まって「セキュリティチームの承認が必要だ」なのです。
写真1:豪アトラシアン エンタープライズ製品統括(Head of Product, Enterprise)のレイ・ワン氏AIが企業で本格的に普及するにはセキュリティが不可欠です。ですから、私たちは、この問題を顧客自身が解決できるようにするためのツールを提供しています。
第1がパーミッション(権限)でのコントロールです。中央集権的に管理でき、ポリシーに細かな粒度を持たせられるようにします。第2が可視性のコントロールで、何が起きているかを確認し、制御できるようにします。
権限のコントロールについては、組織内のだれがAIエージェントを作成できるかを中央の管理者が決められるポリシー設定の仕組みを提供しています。作成したAIエージェントには必ず特定の権限を割り当てる。つまり、意図したサンドボックスの中にエージェントを配置するわけです。これはIT管理者がセキュリティを確保するうえで最初に導入するステップとして定着しつつあります。
──では、可視性のコントロールとは?
可視性については強調したい点が2つあります。1つは「AI Insights」ダッシュボードです。管理者は、社内のすべてのエージェントについて、だれが作成したのか、どれだけ使われているのかを一元的に把握できます。これにより、安全でないものや使われていないものを定期的にクリーンアップできます。
もう1つが監査ログです。AIが行うほぼすべての行動について、フォレンジック(証跡)としての生データが残ります。管理者がAIのアクティビティを統制するうえで頼りにしている仕組みです。
Teamwork Graph─関係性こそが世界を理解するカギ
──Atlassianプラットフォームの共通データモデル/ナレッジグラフ「Teamwork Graph」についてうかがいます。ナレッジグラフは一般に、データ同士の意味的なつながりを可視化・構造化する技術を指しますが、もう少しわかりやすく説明してください。
そうですね、検索インデックスを大幅に強化・拡張したものと言えばわかりやすいでしょうか。検索インデックスがテキストだけに焦点を当てるのに対して、Teamwork Graphは、組織における人や業務、知識、事業目標、意思決定などの関係性を、履歴を持つコンテキストとして格納します。最終的には、関係性こそが世界を理解するための強力な要素になると私たちは考えています(写真2)。
写真2:Team on Tour Tokyo 2026の基調講演でワン氏は、ナレッジグラフ「Teamwork Graph」が管理する膨大なコンテキストの価値を説いた拡大画像表示
●Next:数千のAIエージェントが走る環境、どうやってセキュリティと性能を維持するか?
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