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[市場動向]

クラウドやDC利用も「負債」に? 新リース会計基準で変わるIT契約の“落とし穴”

2027年4月に向けてなすべきこと─経理とIT部門の共創ロードマップ

2026年8月17日(月)河原 潤(IT Leaders編集部)

2027年4月から強制適用となる「新リース会計基準」により、すべてのリースのオンバランス化が義務づけられる。これは単なる経理処理の変更にとどまらず、IT部門の実務に重大な影響を及ぼす。クラウドやデータセンター利用がリースと判定される可能性や、シャドーITやシャドーAIが「隠れ負債」となるリスクがあるからだ。IT資産管理は今後、財務報告の信頼性を左右する。IT部門は経理と連携し、契約の洗い出しと管理体制の刷新を急ぐ必要がある。ここでのアクションは、ITガバナンスの強化や経営へのIT投資の明示といった、自社の経営とITに資するポジティブな成果ももたらす。

新リース会計基準の「全リースのオンバランス化」が示すこと

 企業会計基準委員会(ASBJ)が2023年10月に改正・公表した新リース会計基準(正式名称:企業会計基準第13号「リースに関する会計基準」)。主な対象は、上場企業やその連結子会社・関連会社、会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)や会計監査人設置会社で、2027年4月1日以後に開始する事業年度(連結財務諸表および個別財務諸表)からの強制適用が決定している。対象の3月決算企業にとっては、まさに待ったなし、カウントダウンが始まった状況だ(図1)。

図1:新リース会計基準の適用スケジュール
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 新基準の核心は、これまで認められていた「賃貸借処理(オフバランス処理)」の廃止にある。

 従来、PCやサーバー、複合機などのオペレーティング・リース取引は、毎月のリース料を「費用」として計上するだけで済んでいた。しかし新基準では、原則としてこれらすべてのリース契約について、「使用権資産」および「リース負債」として貸借対照表(バランスシート、B/S)に計上(オンバランス)しなければならない(図2)。

図2:新リース会計基準が求めるオンバランス化によるB/Sの変化比較(出典:Sansan「新リース会計基準とは? 現行基準との違い、経理業務への影響や対応策を解説」を基に作図)
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 これは、国際会計基準IFRS第16号とのコンバージェンス(整合性)を図るための改正だが、日本企業に与えるインパクトは大きい。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業はその推進の過程で、企業の「持たざる経営」としてリースやサブスクリプションの活用を進めてきた。しかし、新基準適用後は、これらが負債として顕在化するため、自己資本比率の低下、ROA(総資産利益率)の悪化、負債比率の上昇を招く可能性がある。

 一方で、リース料が減価償却費と支払利息に分解されることで、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は改善する。また、金融機関との間で財務制限条項(フィナンシャルコベナンツ)を締結している企業は、オンバランス化により抵触リスクが生じる可能性があるため、事前の見直しが必要となる。

 単に会計上の数字が変わるだけではない。B/Sが肥大化することで、投資家や金融機関からの評価指標が変わる。経営層は、IT投資を含む設備投資計画の見直しを迫られることになる。

 ここで重要になるのが、「どの資産が、どのような契約で、いつまで使われるのか」を示す正確なデータだ。このデータの精度が経営判断の質を左右することになる。つまり、IT資産の管理責任を持つIT部門が、この数字の根拠を握っていると言っても過言ではない。

IT資産管理と会計の境界線が消滅─IT部門がカギを握る対応作業

 多くのIT部門にとってIT資産管理(IT Asset Management:ITAM)は、従業員(エンドユーザー)のライセンスやセキュリティの管理のために行うものであっただろう。しかし、新リース会計基準においては、IT資産管理が財務報告の信頼性にもかかわってくる。

 新基準適用後は、これまで経理部門が管理対象としていなかった(費用処理していた)大量のIT機器リース契約が、すべてB/Sに計上されることになる。ここで、経理部門の固定資産台帳とIT部門のIT資産管理台帳の間にズレ・重複などの不整合があれば、それが粉飾や誤謬につながるリスクとなる(図3)。

図3:固定資産台帳とIT資産管理台帳の間の「ズレ」
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 さらに厄介なのが、リースの「期間」と「解約」の扱いだ。IT部門の業務現場では、「PCが故障したのでリース期間中に交換」「システムのリプレースによりサーバーを中途解約」「エンドユーザーの利用実態からクラウドの契約プランを変更」といった事象が日常的に発生する。これまでは現場レベルの処理で済んでいたかもしれないが、オンバランス化された後は、これらの変更が発生するたびに「リース負債の再測定(再計算)」が必要となる。

 IT部門が機器のリプレースや契約プランの変更などのアクションを起こした際、経理部門でタイムリーに会計数値を修正するワークフローが確立されていない場合、決算数値は実態と乖離してしまう。IT部門は、自らのオペレーションが財務諸表に直結していることを認識する必要がある。

●Next:IT部門が必須で把握すべきリース判定のポイント

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