NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とNTTデータ、日本電信電話(NTT)は2008年9月2日、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業者向けのサービス基盤を共同開発すると発表した。この基盤を利用することで、SaaSを展開する事業者は短期間かつ初期投資を抑えて事業を展開できる。
3社協業の背景
NTT Comなど3社は、大きく2つの理由からSaaSの需要が高まると判断した。1つは、事業環境の著しい変化やシステムの複雑さが増したことにより、システム構築や運用においてアウトソーシングに対する企業の意識が高まっていること。もう1つは、高速で安価なネットワークが普及したことだ。
従来、NTT Comはネットワーク基盤を、NTTデータはアプリケーション基盤をそれぞれ個別に提供していたが、SaaSにおいては双方のサービスが補完関係にある。共同でサービスを提供することで、ワンストップで基盤を利用できると考え、協業に踏み切った。
SaaS基盤の特徴
NTT Comは「BizCITY for Saas Provider」、NTTデータは「VANADIS SaaS Platform」と呼ぶSaaS事業者向けのサービス基盤をすでに提供している。BizCITYはVPNを、VANADISはシングルサインオンなどの機能を持つ。両社を連携させるミドルウエアを共同開発し、SaaS事業者が共通に必要とする機能群を一貫して提供する(図1)。
ネットワークにはNTTが普及を推進しているNGN(次世代ネットワーク)も利用できる。SaaS事業者はネットワーク接続や認証、料金回収代行などを備えるサービスを利用できる。
販売戦略
NTTグループが想定するSaaS基盤の主な利用者は、これからSaaS事業を始めようとするIT企業。どんなIT企業が利用するのかまだ決まっていないだけに、ユーザー企業にとっての価値は高くない。
だが、ユーザー企業にとっても自社のグループ企業向けのSaaS、あるいは業界共通の取引基盤として活用できるのも事実。「料金は個別見積もり」で敷居が高く見えるのが難点だが、ネットワーク基盤やデータセンターの信頼感は高い。先行きに注目しておく必要がありそうだ。