複数の企業にまたがって、セキュアな情報共有/コラボレーションを支援する仕組みをSaaSで提供する米イントラリンクス(IntraLinks)。来日したCMO(マーケティング最高責任者)のグレゴリー・ケネップ氏に、事業戦略を聞いた。
イントラリンクス(IntraLinks)は米ニューヨークに本拠を置くITベンダーで、設立から既に12年が経過した。複数の企業が、機密情報を安全に共有しながら緊密にコラボレーションするための環境をサービスとして提供している。つまり、昨今のカテゴライズで言えばSaaSである。創業当初から「サービス」としてのビジネスモデルにこだわってきており、ここにきて時代が追随してきたという印象を持っている。
サービスのラインナップは大きく2つある。1つは「IntraLinks Exchanges」。これは、複数の企業がファイアウオールの内外を問わず、安全に情報共有するとともに、文書類へのアクセス証跡などを法令順守の視点で厳密に管理するサービスだ。機能的に見れば、コンテンツ管理、コラボレーション、ワークフローを統合したプラットフォームをベースとしている。もう1つは「IntraLinks Courier」で、機密性が高い大容量の文書ファイルを安全に転送・管理するためのサービスである。
ある機密文書について、誰にその存在を知らせるか、どんなアクセス権を持たせるか、改編やプリントアウトをどの範囲で許可するかといった細かいレベルをコントロールするとともに、その履歴をしっかり管理できることに強みがある。文書は1つのインスタンスとして管理し、メール添付のように複数のコピーが社内外に作成されることはない。加えて、検索、チャット、Web会議などコラボレーションに必要な機能も、すべてセキュアな環境下に実装している。SaaSという特性を生かし、平均して年3回はバージョンアップを繰り返している。ユーザーはただちにその新機能を使える。
当社のサービスはまず、複数の金融機関が協業によって融資するシンジケートローンの分野で活用が進んだ。関係者以外に漏れてはいけない大量の情報をいかに効率よくハンドリングするか。そのニーズにうまくフィットしたわけだ。我々としても顧客の声や、業界や行政が求めるコンプライアンス基準などに適合するよう機能に磨きをかけてきた。そうした取り組みが評価され、金融サービスに続いて製薬やライフサイエンス、エネルギー、法務、保険などの業界に一定の地歩を築くことにつながった。ワールドワイドで見ると上位銀行50行をはじめ、製薬会社や臨床研究機関のそれぞれ上位10社が顧客である。
日本市場に本格参入したのは6年前のこと。やはり金融や製薬などの業界を主要マーケットと位置付けて展開している。目下、日本国内でのパートナーは電通国際情報サービスで、積極的に協力しながらビジネス展開している。先般も、製薬大手の第一三共に「IntraLinks Exchanges」を納入することを発表したばかりだ。グローバル企業の多くは日本に拠点を設けているし、今後のアジア展開の足がかりを作るという観点でも、日本は非常に重要なマーケットだ。我々のビジネスの中で15%を担うまでに成長させるのが当面の目標となる。
ファイル転送、ワークフロー、ドキュメント管理といった個別の機能で見るとそれぞれ競合製品はあるが、それらをすべて統合しサービスとして提供しているという点では真正面からぶつかるコンペティタはいない。むしろ、いつまでもメール添付やクーリエサービスに頼り、ビジネスを変えようとしない企業こそが、我々が注視すべき対象だと考えている。(談)