2010年5月19〜20日の2日間、米Googleによる開発者向けイベント「Google I/O 2010」がサンフランシスコで開催され、会場には5000人に達するディベロッパーらが集結した。話題の中心はWebの世界の次世代標準、HTML5である。
初日の基調講演では、エンジニアリング担当バイスプレジデントのヴィック・グンドトラ氏が登壇。昨年のGoogle I/O に引き続き、次世代WebプラットフォームのキーテクノロジーとしてHTML5の重要性を改めて強調した。
HTML5は、単なる記述言語に過ぎなかったHTMLを大きく進化させ、これまでデスクトップに限られていた数々の機能をWeb上で実現可能にする技術規格だ。音声や動画、3Dといったマルチメディアをより容易に扱えるようなり、ネイティブアプリケーション並みの本格的なWebアプリケーションを具現化できる。
グンドトラ氏は、昨年の同イベントでHTML5の重要性を明言してから今日までの1年間で、この技術への注目がどれだけ勢いを増してきたかを強調。具体的には、キーワード検索量を示すグラフを使って提示した(写真1)。
同氏によると、最初の小さなスパイクは、昨年のGoogle I/OでHTML5推進を宣言したことによって起こり、最初の大きなスパイクはYouTubeによるHTML5適用(今年1月以降)によって引き起こされた。続いて今春には、アップルCEOのスティーブ・ジョブス氏がFlashを排除する一方でオープンなHTML5をプッシュする一連の発言をしたことや、マイクロソフトによるHTML5サポート提言によって新たなスパイクが引き起こされた。
続いて、プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのサン ダー・ピチャイ氏が登場し、主要ブラウザのHTML5対応状況について説明した。
12カ月前、前回のGoogle I/Oが開催された頃の各主要ブラウザによるHTML5実装状況は、まだ限定的なものだった。最も対応が進んでいたのはFirefoxで、ビデオ、SVG(2次元ベクトル画像描画のための要素)、ジオロケーション、WebストレージなどのWeb APIをサポートし始めていた。次いでSafari、Chrome、Operaが対応を徐々に開始。その後、この1年で主要ブラウザは、HTML5への対応を加速し、今年末にはWebソケットなどの機能も含め、HTML5の一通りの機能実装を達成する見通しにある(写真2)。もっとも、Internet Explorerだけは一部機能への対応にとどまり、出遅れ感がある。
ピチャイ氏は、HTML5はモバイル環境でも対応が進んでいることに言及。Googleサイトに来るモバイル検索トラフィックを、HTML5対応ブラウザ/未対応ブラウザで比較してみると、2009年秋くらいから対応ブラウザの数が上回り、今なお差を広げているという。
このように世間からの注目が高まり、ブラウザの対応も進んだHTML5。もちろん、それは企業システムにも大きな可能性をもたらす。こうした動きを国内のユーザー企業はどのくらい認知しているのだろう。Webの世界の次世代標準となる技術ゆえ、今後も常にウォッチしなければならない。
(堀田有利江=ITジャーナリスト)