トヨタ自動車と米セールスフォース・ドットコム(SFDC)は2011年5月23日、自動車向けシステム開発における提携を発表した。最初の取り組みとして、SFDCの企業向けソーシャルネットワーキングサイト(SNS)である「Chatter」をベースにした、トヨタの消費者向け自動車コミュニケーションサービス「トヨタフレンド」を共同開発する。
トヨタフレンドは、iPhoneやiPadといったスマートデバイスで自動車の走行情報やバッテリー残量を閲覧したり、友人の自動車の位置情報を把握しながらテキストがやり取りできる消費者向けクラウドサービス。電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)向けに、トヨタが2012年に提供開始する。
[MS提携との関係]
バック/フロントで棲み分け、クラウドの選択肢を確保
トヨタは、2011年4月に米マイクロソフトとも車載システム分野における提携を発表済みだ。トヨタが開発中の自動車や住宅の電力管理システム「トヨタ スマートセンター」などを、MSのPaaSである「Windows Azure」上で構築するのが骨子。今回のトヨタフレンドは、バックエンドシステムであるトヨタ スマートメーターが収集した情報を活用する、フロントエンドシステムだ。
SFDCはMSと同様、トヨタの車載システムの開発やサービス提供を手がけるトヨタメディアサービスの第三者割当増資に応じる。トヨタメディアサービスへの出資総額は10億円で、内訳はトヨタが4億4200万円、MSが3億3500万円、SFDCが2億2300万円。
トヨタは今後、SFDCやMSのクラウドサービスの活用を他のシステムにも拡げる考え。MSに加えてSFDCを提携先に選んだ理由は、「クラウドを活用していくうえで、.NETなどのマイクロソフトの独自技術だけでなく、複数の選択肢を揃えておく必要があると考えた」(トヨタメディアサービス代表取締役を兼務する、トヨタの友山 茂樹常務役員)ことにある。
[サービスの詳細]
状態通知で充電忘れを防止、クルマ所有者同士の交流を促す
トヨタフレンドは、自動車からのデータ収集機能を持つトヨタ スマートセンターと連携して動作する。トヨタ スマートセンターが収集した自動車のバッテリー残量や走行距離といったデータを、トヨタフレンドに転送。トヨタフレンドが備える「Tweet変換エンジン」でデータをChatterのつぶやきに変換し、自動車の所有者に通知する。
事前に自動車と所有者のアカウントを作成しておく必要がある。トヨタフレンドは自動車に成り代わり、所有者あてにつぶやきを自動送信する。例えばバッテリー残量が少なければ「電池残量が5%です。充電プラグは接続しましたか?」と充電を促すつぶやき、走行距離が規定値を超えると「まもなく走行距離が1000kmになりますので、点検をお願いします」と点検を通知するつぶやきを送信する。
つぶやきの内容は原則として所有者のみが閲覧できるが、承認(フォロー)した友人などにつぶやきを公開することが可能だ。トヨタ スマートセンターが備える自動車の位置情報追跡機能を利用し、フォローした友人と自動車の位置情報を共有しながらチャットができる「フレンドサーチ」機能も備える。ほかにも、FacebookやTwitterに自動車からのつぶやきを転送する機能を選択利用できる。
トヨタは、トヨタフレンドで自動車に親しみを持ってもらい、若者を中心とする“クルマ離れ”に歯止めをかけたい考えだ。「コミュニケーションの進化に併せて、自動車も進化させていく必要がある。自動車の基本である“走る、曲がる、止まる”に“つながる”を加えた自動車像を提案していく」(トヨタ自動車の豊田 章男代表取締役社長)。
(修正2011年6月15日17:48)掲載当初、「トヨタメディアサービス代表取締役を兼務する、トヨタの丸山 茂樹常務役員」としていたのは、「トヨタメディアサービス代表取締役を兼務する、トヨタの友山 茂樹常務役員」の誤りでした。本文では修正済みです。