日本IBMが主催する「Pulse Japan 2011」が2011年10月6日(木)、ザ・プリンスパークタワー東京で開催される。企業のIT基盤のみならず、次世代のビジネスや新しい社会基盤までも視野に入れた上で、適切なサービスマネジメントのあり方に切り込む中身の濃いイベントだ。
IT活用とリスクマネジメントの両立に向けて
強靱なコンピューティングパワー、高機能なアプリケーションやミドルウェア、それらの多彩な利用形態…。日々進化するITが、企業の情報活用力を押し広げている。ビジネス活動とITはもはや不可分の関係にあり、IT活用の巧拙が企業の機動性を直接左右する時代が本格的に幕開けた。
一方、ビジネス活動とITが密接に絡み合うほど、綿密なリスクマネジメントが不可欠になる。情報システムがひとたび機能不全に陥ると、業務の現場が混迷して身動きが取れなくなってしまう──。この事実は、多くの企業が3.11の東日本大震災で体感したのではないだろうか。
先進ITのポテンシャル発揮と、万全のリスクマネジメントをどう両立させるか。ここには、高度な運用管理と継続的な維持改善、つまりは適切な「サービスマネジメント」の取り組みが欠かせない。日本IBMが主催する「Pulse Japan 2011」は、そのサービスマネジメントの最新動向を、一堂に集めて紹介することに焦点を当てたイベントである。
【Pulse Japan 2011開催概要】 ※IBM セキュリティー・コンファレンス 2011 同時開催
◆開催日:2011年10月6日(木曜日)10時~17時45分
◆場所:ザ・プリンス パークタワー東京
◆主催:日本アイ・ビー・エム株式会社
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「レジリエントな」IT基盤の追求
ここのところ毎年開催されているPulse Japanだが、今回は「事業継続と成長を実現する、戦略的クラウド活用とサービスマネジメント」をテーマに据えている。企業そして社会は今こそ、復興と未来を見据えた力強い基盤を視野に入れてアクションを起こすことが必要とのメッセージが込められている。急激な変化への対応力と回復力、そして戦略的予知力を備えたIT基盤のあり方を、多面的に掘り下げることを目的としているのだ。
また今回は、リスクマネジメントに関する情報発信を拡充させるために「IBMセキュリティー・コンファレンス 2011」を同時開催するのも特徴だ。攻撃手口の巧妙化、スマートデバイスの普及などのトレンドを受け、セキュリティ対策を巡る新たなソリューションを提示する場ともなる。
「Resilient(レジリエント)」──。弾力のある、回復力のある、などと訳されることが多い言葉だが、まさにレジリエントな情報システム、企業組織、社会基盤を具現化するための解に迫るイベント、それがPulse Japan 2011なのである。今年は概ね1200人ほどが来場する見込みだ。開催規模の拡大をいたずらに追い求めることはしない。IT基盤の管理活用に取り組んでいる人、新しいビジネスモデルを考えている人、高品質なサービス提供を指向している人などに的確な情報を届けつつ、次なるレジリエントなインフラについて共に考えていく足がかりと位置付ける。
午前の講演で全体像を整理
イベントの構成は、内外のスピーカー陣による企業講演やセッション、そしてデモ・ブース展示が中心となる。開催を1日に絞っているだけに、その内容は多彩で密度の濃いものになっている。ここで、プログラムのおおまかな構成を整理しておこう。
まず注目したいのが、午前の部に予定されている[特別講演]と[基調講演]である。
前者の[特別講演]の壇上に立つのは、米IBM CorporationのJoao Perez氏だ。同社のサービスマネジメント分野の中核製品の1つとして「Tivoli」はよく知られるところであるが、氏はそのワールドワイドでのセールス担当ヴァイスプレジデントを務める人物である。当日は「スマートで俊敏なビジネスを牽引するインテグレーテッド・サービスマネジメント」と題し、最新動向を会場に語りかける予定だ。
従来からのサービスマネジメントの考え方を1歩進めた「インテグレーテッド・サービスマネジメント(ISM)」については、2011年2月27日~3月2日に米ラスベガスで先行開催された「Pulse 2011」においても、中核的なテーマとして位置付けられていた。それは単なる机上論のビジョンではなく、着実に浸透・実行されつつあるものであることが改めて強調されることになるだろう。IT基盤の域を超えて、社会基盤までを視野に入れたサービスマネジメントの将来像を知る上で、必聴の講演である。
Perez氏からのバトンを受け取る形で、次の[基調講演]には日本IBMの荒川朋美氏(Tivoli事業部 理事 事業部長)が登壇する。演題は「事業継続と成長を実現する戦略的クラウド活用とサービスマネジメント」で、これはまさに今回のPulse Japan 2011のテーマそのものである。
日本企業が置かれている社会環境、経済環境、事業環境などに照らしながら、インフラ再構築の道筋をどう描くか──。クラウドや運用管理など最新の技術動向とビジネスとの関係を整理し、今後の事業基盤のグランドデザインに思いを巡らせる。そして、次のアクションを起こすために、本イベントを最大限に活用する。そうした全体像を整理する上で、多くのヒントが得られるはずだ。
最新情報はテーマ別セッションで
13~17時の午後の部では、テーマを絞り込んだ数多くのトラックセッションが繰り広げられる。1つの時間帯に着目すれば、「A」~「F」の6つのトラックが並行してプログラムされていることを頭に入れておきたい。各トラックのテーマは以下の通りだ。
- Aトラック:事業の継続と成長を支える戦略的クラウド活用
- Bトラック:事例に見るサービスマネジメント活用
- Cトラック:サービスマネジメント先進ソリューション
- Dトラック:企業と社会の基盤を支えるスマートなソリューション
- Eトラック:事業の継続と成長を支えるIBM System z
- Fトラック:サービスマネジメント製品最新動向
例えば、クラウドに関する最新情報を収集したいということであれば、「A」トラックを優先的に聴講するスケジュールがお勧めとなる。本イベントの中核テーマであるサービスマネジメントについては「B」「C」「F」が該当トラックとなるが、その中でも事例にフォーカスするか、それとも最新ソリューション像、あるいは技術的詳細をウォッチするかによって注目すべきセッションが絞られる。
IT資産に加え、建物や車両といった物理資産、さらには社会基盤までもを視野に入れた管理ソリューションの動向を追いたいということであれば、「Maximoアセット・マネジメント」に関連した「D」トラックが示唆に富む内容になるだろう。そのほかSystem zに関連した情報を収集するのであれば「E」トラックが設けられており、来場者は自身の関心に応じてセッションを自由に選択できる。
またこうしたセッションの中には、IBMが企業買収などによってラインナップを強化している最新製品の情報もちりばめられることになる。昨年7月に買収した米BigFix社のエンドポイント管理製品、今年3月に買収した米TRIRIGA社のスマータービルディング関連製品などが、どのような形でTivoli製品ファミリーに位置付けられるのかも興味深いところだ。
同時開催の「IBMセキュリティー・コンファレンス 2011」は、午後にプログラムが並ぶ。皮切りとなるのは、13時からの基調講演「企業の成長戦略と本格クラウド時代のためのセキュリティ」だ。続く14時からは、「X」トラック:企業の成長戦略を支えるセキュリティと、「Y」トラック:多様化する脅威から企業を守るIBMの先進セキュリティ、の2つに分け、それぞれ4つのセッションが繰り広げられる。
活用進むクラウドに軸足
セッションプログラムにも色濃く反映されているが、昨年に引き続いて今年のPulse Japanにおいても、クラウドは重要なテーマの1つだ。「所有から利用へ」という概念のレベルから抜け出し、今は「ソリューションとしてのクラウド活用」のフェーズに着実に移行している。
そうした中でITリソースの稼働状況やパフォーマンスなどをキメ細かく監視することがより重要性を増している。一方ではエンド・トゥ・エンドでのセキュリティを考慮することも欠かせない。プライベートとパブリックのクラウド基盤を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」が多くの企業の現実解となってきた状況下において、Tivoliをはじめとする製品群はどのような機能を提供してくれるのか。その最新の姿を確認する意味は大きい。
また、キヤノンITソリューションズなどユーザーの活用事例のセッションも予定されている。日々、実際にクラウドを利用しているユーザーの「生の声」は大いに参考になるはずだ。
なお、「Pulse Japan 2011」ならびに「IBMセキュリティー・コンファレンス 2011」の最新プログラムについては、イベント案内サイトにアップデートが随時公開される。実りある聴講スケジュールを組む上で、最新情報を是非チェックしておきたい。
「近未来」の視点で臨む意義
2008年のリーマンショックを機にIT投資を抑制せざるを得ない状況に直面し、多くの企業は次なるインフラのグランドデザインについて思いを巡らした。そして、そろそろ行動を起こそうというタイミングで大震災を経験し、ITの利活用にかかわる価値観も大きく変わろうとしている。
例えば、節電を余儀なくされるこの夏を乗り切れば済むという話ではない。そこには企業という狭い枠組みを取り払い、社会規模、いや地球規模にまで視野を広げた聡明なアプローチが必要なのではという声が聞かれ始めた。
やや大袈裟な表現になるかもしれないが、今後のインフラデザインに通底するのは「豊かな社会システムの創出」となろう。ITによって実社会をより高度で快適なものにしていこうという取り組みを象徴するものとして「Cyber Physical Systems(CPS)」という言葉がある。目の前で起こり得る事象<Physical>とコンピューティングパワー<Cyber>を適切に融合することで、新たな価値を生むシステムを形成しようというものだ。IBMが推し進める「スマータープラネット(Smarter Planet)」もまた、CPS具現化のアプローチと位置付けられるだろう。
付け焼き刃の事後対応を繰り返すのではなく、広く全体を俯瞰した上で、インテリジェントかつプロアクティブに進むべき道を指し示す──。それこそが次代のシステムであり、企業から社会までも包含する「しなやかなインフラ像」だ。
ITを使って社会にどれだけ貢献し得るか。そうした視点を持ってPulse Japan 2011に臨むことが、より有益で実りある1日につながるだろう。