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[[特別編集企画]エンタープライズ クラウド最前線 ~ハイブリッドクラウドの最適解 Windows Azure ~]
第1回:クラウドへの期待と現実
2012年3月19日(月)
企業情報システムに求められる要求水準は、これまでにも増して高まっている。背景にあるのは、「経営環境の変化に応じたビジネスサイドからの要請」「テクノロジーの大規模な変革期に伴うシステム見直しの必然性」という2つの流れだ。
クラウド戦略~本当にその選択は最適か?
ここ数年のITを巡る日々の報道の中で、最も目に留まるキーワードの1つは「クラウド」だろう。企業情報システムのインフラ層から、業務をこなすアプリケーション層まで、多種多様なサービスが裾野を広げてきたのは確かである。
一部には、“クラウド万能論”のように、これまで企業が抱えてきた種々の課題を抜本的に解決する手段と捉える向きさえあるが、それは本当だろうか。今こそ足下の現実を直視し、自社に真の価値をもたらす活用法は何かを吟味しなければ、トレンドに翻弄されて疲弊するだけという結果に終わりかねない。
地に足が付いたIT戦略を描く参考とするために、企業ITを取り巻く環境の変化を、今一度整理してみよう。
大きな転換期を迎えた企業IT
企業は今、厳しい競争を迫られている。国内市場だけを見ていては成長が見込めないという声は高く、グローバル展開は企業規模の大小を問わず喫緊の課題となっている。異業種参入や規制緩和、新たなビジネスモデルの登場などは茶飯事で、それらに合わせて自社の業務プロセスも逐次組み直していかなければならない。
大震災の経験に照らしたリスク管理や、巧妙さが増すサイバー攻撃への備え、法令順守への対応も不可欠である。経営とITの融合が加速する中で、経営サイドからIT部門に寄せられる課題は多様かつ複雑になる一方だ(図1-1)。
テクノロジーの進展も著しい。サーバーやストレージ、ネットワークといった分野では仮想化技術の適用が進み、ITリソースの柔軟な利活用の素地が急速に整ってきた。これはハードやソフト、ネットワークの加速度的な進歩と相まって「クラウドシフト」の動きを推し進めているのは周知の通りである。
データ活用の可能性も広がりを示す。巷間言われる「ビッグデータ」を巧みに活用するための技術が次々に市場に登場しているのはその典型である。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア上で語られる情報、動画や写真などを使ったリッチなコンテンツ、GPSやRFIDといった様々なセンサーを介して機器が発信するデータ…。単にボリュームが多いというにとどまらず、多種多様で刻々と生まれ流れゆくデータを利活用しなければならない。単に過去の実績を分析するのではなく、膨大なデータから「洞察」を得て「次の一手」に結び付けることが競争力に結び付く時代が幕開けようとしている。
一方で、スマートフォンやタブレット端末の普及も目覚ましい。いつでもどこでもネットにつながり、しかも直感的な操作で扱える多機能デバイス。個人利用の域にとどまらず、いまやビジネス用途でも有力な選択肢だ。これまでにない“ユーザーエクスペリエンス”は、企業システムに新風を送るとともに、新しいワークスタイルを考える起点としても位置付けられるようになった。
加速する「所有から利用」への流れ
こうしてざっと見ただけでも企業のIT部門は、様々な要件に向かい合わなければならない。眼前の課題を個別に対処するだけでは限界があることを多くの担当者は感じており、もっと大局的に見た「企業ITのグランドデザイン」が不可欠との認識が日増しに広がっているようだ。もっとも、IT部門は限られた人員とコストで日々の業務をこなしており、なかなか余力がないのも事実。漫然とした問題意識を抱えつつも、具体論に踏み切れないままであるケースは数多く見られる。
企業ITのメガトレンドに照らせば、クラウドの高度化・進展を前提とした「所有から利用へ」という流れがある(図1-2)。とりわけインフラの領域については、中長期的に多くの領域においてクラウド活用が進むだろうとの見方が一般的だ。サーバーやストレージ、OSといったリソースをプール化しておき、必要な時に必要なだけを配備して使用するという発想は理にかなったものだ。具現化のためにプライベートクラウドの環境を整える事例は着々と増えているし、一部の用途ではパブリッククラウドを活用する動きも広がっている。周辺技術の進歩とあいまって、クラウドシフトは確実に進むだろう。
アプリケーションの領域でも「利用から所有へ」の流れは強まっている。特定業務に的を絞ったSaaSが登場し、一定のユーザーを確保したのはその第1フェーズだった。さらに現在、多種多様なSaaSが裾野を広げており、それらの“選択と組み合わせ”で、一定レベルの機能要件を満たせる第2フェーズに突入しつつある。従来は個別のサービスと1:1で契約していたが、今はサービス同士が連携する工夫も盛り込まれるようになり、1:Nの利用形態が現実味を帯びてきた。
ある種の汎用的な業務、つまりは経年で変化しにくい業務ならばクラウドに馴染みやすいということが言えるだろう。そうした業務は多くの企業に共通する傾向があり、そこに目をつけたベンダーが気の利いたサービスを市場投入、しかも競争原理が働くので比較的リーズナブルに利用できるという期待も伴う。先に触れたビッグデータ分析やソーシャル連携などのニーズも取り込まれるかもしれない。
一方、その企業ならではの勝負所、すなわち“個性”を担う領域は独自に開発・実装しなければならないことは当面は変わりそうもない。もちろん、その場合は稼働環境はクラウドに置くことは十分に考えられる。
現実解として浮上するオンプレミス-クラウド連携
次世代の企業ITのグランドデザインを描く上で、クラウドサービスを組み入れることは今や不可欠な条件だろう。ただし、現時点でのトレンドばかりに目を奪われていては、具現化し得るシステム像には結び付かない。
その大きな理由が、企業はすでに多大なシステム資産を抱えているという現実があることにある。“新地(さらち)”に新しいシステムを構築するという話ならば、新進気鋭の製品/サービスを含めて、ある種の理想的な構成を検討しやすい。とはいえ、それは机上の空論に陥りがちだ。
企業には、過去から綿々と使い続けてきたシステムやデータの資産、そして慣れ親しんだ業務フローや運用ノウハウといったものが存在する。そのしがらみに固執することの是非はさておき、それをまったく無視して今後のシステム展開を考えるわけにはいかない。
「現実(as-is)」と「理想(to-be)」があるなら、それを切り離して考えるのではなく、徐々に後者に近づけていくアプローチ、すなわちソフトランディングの道筋をつけることが現実解となるだろう。
クラウドの話に引き戻すなら、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドなどの特性を理解した上で、現状を鑑みながらアクションを起こせる解、すまりは“ハイブリッド”を想定したシステム基盤が有力な選択肢となり得る。もちろん、各企業のすべてのニーズを満足できるものではないだろうが、自社の現有システム資産、開発スキルを含めた人的リソース、運用ノウハウなどを最大限に生かしながら、より弾力性に優れたシステムを目指す上で、ハイブリッドが想定された環境は魅力的に映る。
こうしたニーズを反映して、当初は自社クラウド一辺倒だったベンダーも含め、最近は各社がオンプレミス環境や他のサービスとの連携を謳う傾向が強まり始めている。
そうした中で、マイクロソフトが提供するWindows Azureは、当初からオンプレミス-クラウド連携を強く意識したものだった(図1-3)。スタック群の互換性を重視するだけでなく、運用なども視野に入れたトータルな解を追求する姿勢が見える。そこにはWindows ServerやSQL Serverなどを軸に企業システムに食い込んできた自負と責任、そして戦略がある。
次回は、オンプレミス-クラウド連携を中心テーマに据えて、Windows Azureの特徴を概観する。