クラウドサービスの内容を理解したとしても、実際に利用するとなれば話は別。 どのようなシステムなら移行できるのか。そのとき、どの程度のコストが発生するのか。 何を準備する必要があるのか。日々の運用や障害対応は全部クラウド事業者が引き受けてくれるのか…? きっと、色々な疑問がわいてくるはずだ。このパートでは「IIJ GIOコンポーネントサービス」を使って、 システムを新規構築、移行する際に気になるポイントをQ&A形式でまとめた。
Q 既存のシステムを外部のクラウドサービスに移行できるのか?
ECサイトやソーシャルゲームなどネット事業者の運営基盤としての活用が中心というイメージが強いクラウド。だが、IIJ GIOの導入事例を見ると、業務システムを移行する企業も増えている。
例えば、ATM(現金自動預払機)などの監視、保守運用サービスを主力とする日本ATM(現社名:SocioFuture)。ERPやSFAをはじめ、人事管理やファイルサーバーなど複数のシステムを、IIJのGIOコンポーネントサービス上に移設した(図4-1)。運用負荷の軽減、コストダウンが目的だ。広域イーサネットやインターネットVPNを使って、GIO上のシステムと各拠点を接続。モバイル端末からもアクセスできる。2011年末から運用を開始している。
水処理施設の設計や施工、運用を行う西原環境も、業務システムを全面的にクラウドへ移行した1社である。東日本大震災を受けて、自社でシステムを運用するよりも事業継続性を高められると判断した。複数のクラウドサービスを併用しており、GIOコンポーネントサービスでは仮想デスクトップやグループウェア、給与管理システムなどを運用する。
「特に、コンポーネントサービスは一般企業の利用を強く志向している。企業のシステムをそのまま移動させられるというのが基本的な考え方だ。最近ではメガバンクでの採用事例も出てきている」(神谷修GIOマーケティング課長)。
しかし、当然だが、一気に業務システムをクラウドに移行する企業は少数派。「小規模の情報系システムやキャンペーンサイトを構築し、問題なく利用できることを確認してから、徐々に重要度の高いシステムを移行していくケースが大半を占める」(マーケティング本部の伊藤嘉章2課長)。
Q どの程度、料金が掛かるのか?
システム導入時にハードウェア費用などが一括で発生するオンプレミス。それに対して、使用したリソースの量に応じて料金を支払うクラウドサービス。基本的には、GIOコンポーネントサービスは後者。従量課金制を採用している。ただし、導入時に初期費用がかかる。利用者の要件に合わせて、ハードウェアやネットワークを組み上げる際に、技術者の工数が発生するためだ。
図4-2はECサイトのインフラ構築費用を見積もった例である。サーバーやストレージ、ロードバランサーといった構成要素ごとに、初期費用と月額利用料を設定しており、それらを積み上げると実際の負担額が分かる。この例の場合、利用開始時に117万4000円、その後、インフラの利用期間中、毎月60万2000円を支払うことになる。実際には、既存システムの構成図などをIIJの担当者に渡して、見積もりを依頼する企業が多い。
IIJの神谷修GIOマーケティング課長によれば、「自前でハードウェアを購入して5年間で償却する場合と、サービスを5年間利用し続けた場合で(初期費用を含めて)、ユーザーが負担するコストが同程度になるよう設定している」という。つまり、5年以上使い続けるなら購入が得という計算が成り立つ。ただし、ハードの老朽化などを考えると単純にどちらが得とは言い切れない。
さらに、コンポーネントサービスはサーバーやストレージなどの各構成要素に設定された最低利用期間(原則として1カ月)を超えれば、いつでも自由に解約できる。月額利用料を日割りで精算するほかは、違約金なども発生しない。ハードウェアを資産として計上する必要がなくなる点も大きなメリットだ。
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