[市場動向]
ビッグデータはIT業界だけのものではない─世界規模の社会実験プロジェクトがスタート
2012年10月9日(火)IT Leaders編集部
もっぱらIT業界のトレンドとして語られる"ビッグデータ活用"。だが、社会を変革するようなテクノロジーは社会全体が関心を持つべきではないか。そんな考えから世界中の人々を巻き込んだ壮大な社会実験がスタートした。
世の中には自分と瓜二つの人間が3人いるという。彼らが今どこに住み、どのような考えを持ち、どのように生活しているか知ることができたら?
一昔前なら途方もつかなかった想像が現実のものになるかもしれない。そうした予感を抱かせる取り組みが進められている。「The Human Face of Big Data」と呼ばれるプロジェクトである。発起人は、米アゲンスト・オール・オッズ・プロダクション社(Against All Odds Productions)のCEOリック・スモーラン氏。「LIFE」や「ナショナルジオグラフィック」など、世界的に著名な雑誌でカメラマンとして活躍後、現在の会社を設立。テクノロジーを駆使して、ユニークな社会実験プロジェクトをいくつも手がけてきた人物だ。
今回のプロジェクトのテーマは、 "ビッグデータ"。世界中に分散する数十億個のセンサーや、RFIDタグ、GPS対応カメラ、人工衛星などから集めたデータを読み解き、人類についてのさまざまな気づきを得ることを目指す。ビッグデータの利活用が人類にもたらす利益とリスクについて、IT業界の人々以外にも考えてもらうきっかけを作るのが目的だ。EMCやシスコ、フェデックスなどの協力を経て、2012年9月13日にスタート。今年12月には、プロジェクトから得られた知見をまとめた書籍を刊行する。
スマホをセンサーに見立て世界中の人々の情報を収集
プロジェクトでは、 "アザラシの頭部にセンサーを装着して海底地図を作る""気象衛星から得られる天候や温度などのデータを使って、マラリアを媒介する蚊の発生を予測する"など、全部で6つの実験を試みる。冒頭に紹介した、自分と瓜二つの人を探す実験もその1つ。スマートフォンをセンサーに見立て、人々に関するさまざまな情報を収集し、共通点や傾向などを調べる。期間は、2012年9月25日から11月20日まで。下記のURLからダウンロードできる。
- 「The Human Face of Big Data」プロジェクトのホームページ
http://humanfaceofbigdata.com/
具体的には、英語、日本語、中国語など8カ国語に対応したスマートフォン向け専用アプリをApp StoreやAndroidマーケットで無料配布。主に2つの情報を収集した。1つはパッシブデータ。GPSを使って毎日の移動距離を調べたり、振動センサーで最も活動的な時間帯を調べたりする。もう1つは、利用者の思想に関する情報。"人間は本質的に善と悪のどちらだと思うか""DNAを自由に操作できるとしたら、自分の身体のどこを変えたいか""重要なイベントの前にどのような験担ぎをしているか"といった設問に答えてもらう。質問は、「Me and Myself(自分について)」「Family(家族)」「Trust and Safety(信頼と安全)」「Sleep and Dreams(睡眠と夢)」「Sex and Dating」(性的関心とデート)」の5分野、合計100問ある。
こうして収集したデータをサーバー側でリアルタイムに処理。専門家によるデータ分析に供する一方、結果をアプリにフィードバックする。ユーザーは、自分と似た考え方を持った人がどの地域に何人ぐらいいるか調べたり、他人の価値観と比較したりできる。また、顔写真をアップロードすると、自分に似た人の顔写真をコンピュータが自動的に検索して提示。その人物の居住地域や回答内容を閲覧できるオプションもある。
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