国内における商用ISPの草分けであるインターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する「IIJ GIO 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」は、VMwareの仮想化プラットフォームそのものの管理をユーザーに委ねることで、自由に仮想化環境を構築/活用することを可能にするIaaSである。クラウドの柔軟性と低コスト、それにオンプレミスの自由さと信頼性を兼ね備えたサービスだと言える。
多様な組み合わせから自社に最適な構成を選択
VWシリーズのサービスメニューは、「VMware vSphere ESXiサーバ」「データストア」「VM 通信ネットワーク」の3つのカテゴリで構成されている(図2)。
ESXiサーバは、「H240VW」と「H240VW-FC」の2 種類を用意。いずれもCPUが12コア、メモリーが96GBとなっており、異なるのはH240VW-FCがFC(Fibre Channel)ポートを備えている点だ。
データストアについては、さらに「プロトコル」「ディスク性能」「ディスク容量」の3つの要素から構成され、組み合わせがパッケージングされている。このうちプロトコルは、NFS、iSCSI、FCの3種類から選択可能。ディスク性能としては、標準ディスク、高速ディスク、超高速ディスクと性能に応じた3クラスが用意されている。このうち超高速ディスクは、フラッシュストレージとなっている。
そしてVM通信ネットワークは、ローカルVLAN、インターネット接続VLANなどから選択。インターネット接続で得られるアドレスはIPv6も選択可能となっている。
これらのカテゴリを組み合わせて利用することで、ハードウェアなどにかかわる初期投資を抑えながらも、企業の用途に合致したプライベートクラウドを構築できるのである。さらに、IIJ GIOの他のサービスメニューとの連携もサポートしており、ファイアウォール/ロードバランサなどのネットワーク機能や、ファイルストレージ機能などを組み合わせて利用することができる。
VMware のエコシステムをそのまま活用
VWシリーズで使用することのできるソフトウェアは、当然ながらVMwarevSphereでの稼働実績に準拠している。つまり、2,000以上のアプリケーション、約80のゲストOSと言われるVMwareの豊富なエコシステムをそのまま利用できるわけである。仮想アプライアンスも使えるため、ネットワーク機器についてもハードウェアを用意することなく実装可能だ。
IIJでは、VWシリーズのサービス利用シーンとして、プライベートクラウド、バックアップ/BCP、リソース連携などの用途を想定している。もちろん、企業のニーズによってはさらに別の利用シーンも考えられ、そうした用途にも適応可能だ。
まず最も利用が多いと想定されるのがプライベートクラウドのアウトソーシングであり、オンプレミスで構築していたプライベートクラウド環境をVWシリーズの基盤上に構築するというものだ。既存システムをVWシリーズへと移行する際には、システムが仮想化環境で構築されていれば、現状のOSやアプリケーションなどをそのまま引き継ぐことができるため、既存資産の有効活用につながる。
一般的には、既存システムをIaaSへと移行する際、OSをはじめとするクラウド側の環境に合わせてアプリケーションを再構築しなければならないが、VWシリーズであれば既存環境をそのまま移行できるため、アプリケーションの改修やワークフローの見直しも最小限で済む。
次にバックアップ/BCPは、VWシリーズをバックアップサイトやDRサイトとして利用する形態となる。企業側のオンプレミスシステムからVWシリーズ側にバックアップやレプリケーションを実行するほか、企業側サイトもVMwareを採用している場合には、「VMware vCenter Site RecoveryManager」などを利用した高度なDR(Disaster Recovery)連携も行える。
最後のリソース連携とは、企業が所有するプライベートクラウドとVWシリーズを、文字通りリソースを統合して管理する利用方法である。IIJによると、現状ではオンプレミスで構築しているプライベートクラウドからVWシリーズへの段階的な移行過程での連携がほとんどであるというが、同社は将来的には顧客資産のリソースもVWシリーズのリソースも区別なく扱えるような統合化が行われ、さらなるリソースの最適化が進むと見ている。