国内における商用ISPの草分けであるインターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する「IIJ GIO 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」は、VMwareの仮想化プラットフォームそのものの管理をユーザーに委ねることで、自由に仮想化環境を構築/活用することを可能にするIaaSである。クラウドの柔軟性と低コスト、それにオンプレミスの自由さと信頼性を兼ね備えたサービスだと言える。
プライベートクラウドへのエンタープライズニーズに応える
IIJ が8月1日に提供を開始した「IIJ GIO 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」は、仮想化プラットフォームを提供することで、ユーザーが自由に仮想化環境を構築できるIaaSである。同社では2009年からクラウドサービス「IIJ GIOサービス」を提供しているが、VWシリーズはその実績を踏まえて提供される新たなサービスである。既存サービスではハードウェアからOSまで定められた環境が用意されているのに対して、VWシリーズでは、仮想サーバーの設計やOSの選択/構築の段階からユーザーが自由に行えるのが特徴だ(図1)。
VWシリーズという名称に示されているように、仮想化技術には「VMware vSphere」を採用。仮想サーバーを統合管理するための「VMware vCenter Server」と組み合わせての提供となり、仮想化システムの設計/構築から運用管理までをオンプレミスのプライベートクラウドと同等の自由度で実現することができる。
IIJがVWシリーズを送り出した背景には、クラウドサービスに対するプライベート利用ニーズの高まりがある。これまでにIIJ GIOを導入している企業は700社以上に達し、1,100以上のシステムが運用されている。そのうち主力サービスであるコンポーネントサービス利用者の半数近くが、インターネットではなく閉域網のWANサービスを経由してIIJ GIOを利用しているのである。また、IaaSの利用者の多くがオンラインゲームやソーシャルアプリケーションのプロバイダーという印象があるが、IIJ GIOユーザーの業種は多岐に渡っており、その用途もエンタープライズ利用が8割を占めているという。
こうした背景の下にVWシリーズでは、単に利用回線に閉域網を用いるだけで「仮想プライベートクラウド」を標榜するのではなく、仮想化プラットフォームのコントロール自体をユーザーに委ねるというアプローチを取った。このアプローチでIIJは、同社が考える「持たないプライベートクラウド」の理想形の1つを示したと言える。