M2M(Machine to Machine)やIoT(Internet of Things)など「モノのインターネット化」は、果たしてどれくらいの市場規模、あるいは経済価値をもたらすのかーー?回答不可能に思える、この問いに対し、シスコシステムズは全世界、および日本における経済価値を積み上げ型で推計し、公表した。「日本では今後10年で約40兆円の経済価値」がその答である。
同社が推計したのは、M2MやIoTに加え、M2P(Machine2People)やP2P(People2People)を含めた、Internet of Everything(IoE)の企業部門における経済価値である。スマートグリッドや農業などのIT化、海外の工場の稼働状況を国内から遠隔監視・制御するスマートファクトリ、あるいは最近、普及の兆しを見せている携帯型のデバイスとクラウドを組み合わせた健康・体調モニタリング・サービスなどが、IoEに含まれる。
シスコの推計によると、今後10年間にIoEはサプライチェーンや物流で1810億ドル、顧客サービスで2130億ドル、事業や製品のイノベーションで2390億ドル、社員の生産性向上で460億ドル、資産運用で820億ドルの価値をもたらす。合計すると総額は7610億ドルになり、そのうち50.3%をM2Mが占める。したがってM2Mがもたらす経済価値は3828億ドル、円換算するとおよそ40兆円という計算になる(図1)。
一方、全世界に関しては10年間で14.4兆ドルと推計。地域別では米国が32%、欧州が30%と突出し、中国が12%、日本が5%で続く。また産業別では、製造業が27%、小売/商業が11%、情報サービスが9%、金融保険が9%、医療が7%と見ている。
「インターネットは、情報をデジタル化する第一世代、ビジネスプロセスをデジタル化する第二世代、インタラクションをデジタル化する第三世代を経て今、社会と産業をデジタル化する第四世代に突入した(図2)。それがIoEであり、IoEが生み出す価値は大きい。そのことを示すために、今回の推計を実施した。企業はこのことを認識し、準備し、取り組みに向けて動く必要がある」(同社の木下剛専務執行役員)。
実際、本誌でも特集したようにM2M、IoT、そしてIoEの重要性と企業および企業情報システムに及ぼす影響は大きい。現実感も高まっている。「10年前、ネットに接続できる機能を持ったセンサーは数10万円もしたが、今や数百円で済む。ROMが30KB以下、RAMは10KB以下という極小メモリーでフルスペックのTCP/IP機能を備えたセンサー向けのオープンソースOS『Contiki OS』があるからだ」(同)。木下氏の言うように企業、そしてITリーダーは、すぐにでも何らかの取り組みを実践する必要があるかも知れない(図3)。