日本IBMは2013年7月24日、中型メインフレームの最新機種「IBM zEnterprise BC12」を発表した。クラウド基盤構築用ソフト群のOpenStackの動作や、モバイル端末からの直接アクセスを可能にする機能などを搭載する。従来の基幹系システムの構築・運用環境としてだけでなく、LinuxやWindowsを含めた統合環境を一元的に管理できるプラットフォームとしての提案を強化する。
zEnterprise BC12は、6コアの独自プロセサを搭載する中型メインフレーム(写真1)。従来機種(z114)に比べ、プロセサ能力を高めたほか、メインフレーム上での期間データ分析やクラウド環境の構築、セキュリティの強化、モバイル対応などに必要な機能を追加・強化することで、同社が「System of Engagement」として強調する顧客との接点をつなぐ新規アプリケーションも、System z上で構築/できることを強調する。
具体的な追加・強化点のうち、ハードウエア面では、CPUとメモリーの使用量を減らすデータ圧縮アクセラレータや、System z間の通信を高速化する共通メモリー通信機能、Flashメモリーを使った可用性低下防止、暗号化処理のアクセラレータなどを用意した。
ソフトウェア面では、仮想化ソフト「z/VM Version 6.3」によるクラウド構築用ソフト群OpenStackのサポート、モバイル端末の管理と基幹データやアプリケーションへの直接アクセス、UNIX/LinuxやWindowsなどの混在環境の一元管理機能の強化、システムの稼働状況から問題を予測する監視機能の強化などを実施した。
メインフレーム市場の縮小が進む中、System zシリーズは、LinuxやWindowsなどとのハイブリッド運用機能を評価する顧客層などを中心に採用が広がっているという。日本IBMのマーティン・イェッター社長は、「世界市場ではIBMのメインフレーム事業は伸びている。顧客は、可用性、信頼性、セキュリティ、そして拡張性を求めている。System zは、こうした顧客ニーズに対応した新しい価値を安価に提供する“プレミアム製品”だ」と話す。
海外では、全社規模のデータをリアルタイム分析するといったビッグデータ案件や1日100万トランザクションが発生するモバイル案件でも採用例も登場している。こうした事例をテコに日本市場では、2つの拡販戦略を採る。1つは、専用チームによる移行および新規構築の支援サービスの提供。2013年にはこれまでに、移行負荷軽減支援で10件、新規構築支援で24件のサービス採用または採用予定があるという。
もう1つは、分散サーバー環境を持つ他社機ユーザーへのLinux環境による統合の推進。8月から日本IBM全社で「System z+Linux」によるリプレース提案を強化する計画だ。
zEnterprise BC12の価格は、50MIPSのエントリー・モデルが790万円(税別、2013年内のみ)から。9月21日から出荷する。