情報通信機器ベンダーのルートレック・ネットワークスは2014年4月24日、農業クラウドの新サービス「ZeRo.agri plus(ゼロ・アグリ・プラス)」を、2014年5月7日から提供すると発表した。M2Mの仕組みを使い、最大6区画の栽培を制御することで、複数種の野菜を同時に栽培するような中規模施設でも利用できるようにした。
ZeRo.agri plusは、養液土耕栽培と呼ぶ方法に対応した農業クラウドの新サービス。養液土耕栽培は、灌漑水に肥料を溶かし、水と肥料を同時に、必要な量だけを供給する方法で、節水と肥料の利用効率の向上を図れるのが特徴だ。節水を目的にイスラエルで1950年代から研究が始まり、現在では世界中で近代農業の手法の1つして採用が進んでいる。
ルートレックはこれまで、養液土耕栽培の日本での普及に向け、小規模なハウス栽培を対象にした農業クラウド「ZeRo.agri」を明治大学と共同開発し、2013年5月から提供してきた。ただ中規模の農家では、農業従事者が限られるために、植え付け時期をずらしたり、同一施設でも、日当たりや水はけなどの違いから作物の生育に大きな差がでたり、あるいは都市の近郊農家では、複数の野菜を同時に栽培するといった要件が浮上してきたという。
そこで、ZeRo.agri plusでは、最大6区画を独立して制御できるようにした(図1)。区画ごとに土壌センサーを設置し、センサー情報に基づき区画のそれぞれに最適な量の培養液を提供する。併せて、「タブレットカメラアプリ機能」を搭載し、写真と栽培管理メモをクラウドで管理することで、遠隔地から農作業の方法などの指導が可能になる。
ZeRo.agri plusの提供に合わせて今回、世界最大級の点滴灌水資材メーカーであるイスラエルのネタフィムの日本法人と包括的な業務提携を結んだ。養液土耕栽培の日本での普及を目的に、販売やマーケティングで協力するほか、クラウド版の養液栽培システムの共同企画や開発も視野に入れる。
ネタフィム日本法人のエイタン・マルコヴィッツ会長は、「海外における養液栽培システムの需要は大規模農家が中心で、日本のような中小規模のニーズはこれまで顕在化していなかった。ZeRo.agriシリーズをベースにした商品企画により、日本の中小規模施設のニーズに応えるだけでなく、アジア市場など同様の課題を抱える市場への海外展開が大いに期待できる」と話す。
eRo.agriシリーズは、マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」を動作基盤にしたサービス。タブレット端末などから、土壌の様子などを確認できる(図2)。ZeRo.agri plusの利用料は、初期導入費が1台当たり120万円(税別)から、サービス利用料は月額が1万円(同)からを予定している。ルートレックは、ZeRo.agri関連事業で、今後3年間に10億円の売り上げを見込んでいる。
関連事業としては、遠隔医療や健康管理、各種環境情報の取得、水道やガスなどのスマートメーター、工場における産管理支援のためのセンサーネットワークなどを挙げる。既に、初期投資がかさむというM2Mサービスの課題を軽減する仕組みとしてのOEM(相手先ブランドによる生産)も始めているという。