シスコシステムズが、「経営層から一般社員までが導入しやすい価格設定の個人向けコラボレーションデバイス」と銘打ち、ビデオ会議デバイス2機種と、クラウドサービスを発表した。果たしてそれはどんなものなのか?
電話、テレビ会議、PC上のWeb会議、スマートデバイス…。社員同士や取引先とのコミュニケーション/コラボレーションを支援するツールは増加する一方だ。相手によって、状況によって使い分けるのは面倒だし、管理もやっかい。何とかならないものか?
こうした、ある意味で贅沢な問題を抱える企業は、少数派かも知れない。テレビ会議を導入している企業でも専用の会議室に設置しているか、特定の部署にWeb会議システムを導入しているといったケースが多いだろう。しかし事業環境が加速度的に変化し、顧客の要望に迅速に応えることが最優先課題の1つである以上、多くの企業にとってコミュニケーション/コラボレーション環境の整備は重要なテーマである。
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そうした要望に応えようと、シスコシステムズは新たなコラボレーションツールを発表した。個人の机上に設置する個人向けのパーソナルデバイス「DXシリーズ」2機種と、クラウドサービス「CMR」である。
パーソナルデバイスは、Andorid OSを搭載し、電話や高解像テレビ会議、Web会議、周囲のノイズを低減できる音声システムなどを一体化したもの(写真1)。OSを搭載するため、既存のアプリを使ったり、新規に開発して機能を拡張したりできる。複数ユーザーの設定を記憶し、簡単な操作で呼び出し可能だ。DXシリーズは14インチ・ディスプレイ搭載の70と、23インチの80、7インチ搭載の650の3機種がある。650は発売済みで、DX70/80は9月に販売を開始する。
とはいえ、映像や音声デバイスを遠隔会議向けに強化しただけの、Andorid搭載のタブレットにも見える。実際、それに近いとも言えるが、シスコの説明が振るっている。「これ(図1)を見て下さい。皆さん、これらを使っていたでしょう?どれも当時は最新のツールでした。それを旧世代の遺物にしてしまったのがiPhoneです」。同社のアーウィン・マッティ コラボレーションアーキテクチャ事業担当執行役員)は、こう話す。
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続けて「ではコラボレーションの環境はどうでしょうか。電話にヘッドセット、カメラ、スピーカーがデスクを占有し、配線が複雑で操作も難解なのが現状(図2)。シスコはDXでこれをシンプルにします。人、会話、データを迅速かつ簡単につなぐのです」と語る。
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いかがだろうか?筆者はiPhoneと比べるのはどうかと思うが、「コラボレーションツールを使いやすくしたい」「ビデオコラボレーションを何としても普及させたい」という、同社の思い、真剣さが伝わるプレゼンだった。従来のテレビ会議端末に比べ、価格も抑えたという。「DX70が20万円台、同80が30万円台」(同)である。
加えて、シスコの機器やサービス以外のコラボレーション機器/サービスを使う相手とコラボレーション(ビデオ会議やデータ共有など)を可能にした。それがCMR(Cisco Meeting Rooms)と呼ぶクラウドサービスである(図3)。JabberやWebEXを含めたシスコのサービスのほか、Microsoft Lyncの利用者ともコラボレーションできる。
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しかも、マッティ氏は、「コラボレーション製品は今回の製品でEveryデスクトップまで来ました。この次にEveryポケット、そしてアプリがあり、クラウドサービスも進化させます」と続ける(図4)。
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率直に言えば、OSを搭載するといえども、あるいはクラウドサービスがあるといえども、DX70/80だけでパソコンを置き換えられるわけではない。20万円台という価格に目をつぶり、社員一人1台にしたところで、デスク上にはパソコンも必要になってしまう点で、部や課に1台というのがせいぜいの線に思える。
一方、そうであってもシスコのビデオコラボレーションをシンプルにし、誰もが気軽にシンプルに使えるようにしたいという思いは貴重。iPhoneに匹敵する革新を期待したい。