CAD(Computer Aided Design:コンピュータによる設計)ソフトやPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)ツールを開発・販売する米PTCが2014年6月15日から18日(現地時間)にかけて、年次ユーザーカンファレンス「PTC live Global 2014」を米ボストンで開催した。基調講演などでは、製造業に向けた新たなビジョン「Closed Loop- Lifecycle Management」を提唱。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)時代に向けて、ハードウェアの設計だけでなく、組み込みソフトの開発や、サービスビジネスまで、製品のライフサイクル全体の一元管理が重要だとした。こうした考え方は、実際にモノを作っていなくても、顧客を持つすべての企業にとって、「サービスとは何か」を考える際の参考になるはずだ。
「すべてのモノがつながっていく“スマートコネクティッドワールド”に向けた競争は、野球でいえば、2回が始まったところ。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)における今後のイノベーションは、モノから生まれてくる。モノは、実際に存在し、利用者にサービスを提供するための接点になるからだ」——。
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6月16日(現地時間)、PTC Live Global 2014の基調講演に登壇した米PTCの社長兼CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)であるジム・ヘプルマン氏は、こう切り出した(写真1)。
IoTについては、様々なITベンダーが、それぞれの立場からコンセプトを発表し始めている。だが、その多くは、インターネットや、そこにつながるデバイスの増加・多様化、リアルタイム処理などテクノロジーの価値を強調したメッセージがほとんだ。
そうした文脈の中で、インターネットよりもモノの重要性を強調するのは、CAD(Computer Aided Design:コンピュータによる設計)やPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)など、製造業を顧客に持つPTCのトップとしては当然の姿勢かもしれない。だが、その考え方は、ビッグデータやクラウド、IoT、ソフト開発といった最新のテクノロジートレンドを利用企業の視点で、まとめ上げたものだともいえる。
加えて現在、多くの企業が顧客接点の拡大に向けて、UX(User experience:顧客体験)の向上を模索している。その鍵の1つがサービスだ。PTCが今回、IoT時代の製造業の姿として提唱するのは、ものづくりのサービス化を促すもの。テクノロジーによって、ものづくりや、そこから生まれるモノが、どう変わろうとしているのかを知ることは、多くの企業にとって参考になるはずだ。
製品はネット接続が前提に、モデルベース開発を強化
IoT時代のモノをPTCは「Smart, Connected Product(以下、SCP)」と呼ぶ。SCPをいかに開発・提供していくか、そのための新たなバリューチェーンをどう構築していくかが、製造業にとっての今後の競争点になると強調する。こうした見識は、米ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授とPTCの共同研究の結果だという。
SCPが求める技術要素としてPTCが示したのが写真2だ。SCPに至るまでのモノの形態として、「物理的な単体製品」「Smart Product」そしてSCPの3つの段階に分けている。
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物理的な単体製品を作るための技術要素は、メカトロニクスとエレクトロニクスだった。これをSmart Productに変えるには、さらに拡張されたUI(User Interface)と、ソフトウェア、センサー、およびエレクトロニクスと制御の各技術を組み合わせる。
このSmart Productに、コネクティビティをさらに追加したものがSCPになる。コネクティビティには、PtoP(Peer to Peer)、ハブ&スポーク、メッシュの3種があるとする。なので、SCPの実現に向けては、コネクティビティの機能を持つ組み込みソフトウェアの開発力が、製造業の競争力を高める鍵の1つになる。
さらにヘプルマン氏は、「System of Things(モノのシステム)として、3つの要素を問い直さなければならない」と指摘した。
1つは、ソフトウェアの価値がハードウェアのそれを上回ってきたこと。ハード単体の競争はすでに成り立たず、ソフトウェアと組み合わされて初めてモノとしての競争力が生まれるというわけだ。「PTCが提供するソフト製品よりも、メーカーが製品用に開発するソフトウェアのほうが、行数(ソフトウェアの規模)は多くなる可能性もある」(ヘプルマン氏)という。
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