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パブリッククラウドで高可用性を実現、サイオスのHAクラスタソフト新版「LifeKeeper for Linux ver.8.3」

2014年7月24日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

パブリッククラウド上で、ミッションクリティカルなシステムが求める高可用性を実現するためのソフトウェアの新版「LifeKeeper for Linux ver.8.3」をサイオステクノロジーが発表した。各地にデータセンターを擁するパブリッククラウドの特性を生かしながら、主システムに対する待機系システムを準備するクラスタ構成を可能にする。どのような工夫が凝らされているというのだろうか。

 何らかのシステムを構築する際に、クラウドの利用を最優先で考える“クラウドファースト”。その実践時に問題になるのが、24時間365日の稼働を求められるミッションクリティカルなシステムが求める可用性をどう高めるかだ。読者は、その方法やアプローチをご存じだろうか?

 当然、主・副(待機)サーバーからなるクラスタ構成が不可欠になる。だが仮想サーバーの利用が前提のクラウドでは、システムが稼働する物理サーバーを指定できない。最悪の場合、主・副サーバーとも同じ物理サーバー上に展開され、その物理サーバーがダウンして、待機系までが同時に止まってしまう事態にもなりかねない。

図1:LifekeeperによるHA構成図1:LifekeeperによるHA構成
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 こんな問題を解消するべく、サイオステクノロジーが投入したのが「LifeKeeper for Linux ver.8.3」である。HA(High Availability)クラスタを構成するためのソフトウェアで、クラウド向け機能を強化した。例えば、AWS(Amazon Web Services)を使って、東京のセンターで主・副サーバーを、シンガポールのセンターで待機系サーバーを稼働させるようなクラスタ構成が可能になるという(図1)。

リージョンをまたぐ超遠隔地でのHAクラスタを可能に

 LifeKeeper for Linux ver.8.3の特徴を理解するためには、まずクラウドサービスの大まかな構造を知る必要がある。サイオステクノロジーで事業継続ビジネス事業統括補佐を務める小山恵一氏によれば、「例えばAWSは現在、世界10地域(リージョン)でサービスを運用しています。各リージョンは複数のアベイラビリティゾーン(AZ)から成り、AZのそれぞれが固有の電力や空調、ネットワークを使っています。つまり、同じリージョンであってもAZが異なれば、同時に障害が発生する可能性を減らせます」。

 ここでAZとは、電源や空調、ネットワークを共有するサーバーやストレージ群を指すAWSの用語だ。同じデータセンターの建屋内であっても、電源などの系統を分けたサーバーやストレージ群を複数用意しておくことで、すべてが一度に障害に見舞われる事態を最少におさえる。

 この仕組みを利用し、例えばAWSの東京リージョンにおいても、異なるAZに主系、副系のサーバーを構築しクラスタ構成にすれば、2つのAZが同時にダウンする可能性は低いため可用性を高められる。同じリージョン内の異なるAZでクラスタを構成できる機能は、LifeKeeperの従来版でも備わっていた。

 だがリージョンにデータセンターが1つしかなく、そこに複数のAZがある場合、大規模な自然災害などでデータセンター全体がダウンすると、当然、AZが異なっていたとしても意味はない。そこでLifeKeeper for Linux ver.8.3では、リージョンをまたがってHAクラスタを構成できるようにしたという。

 「AWSには、米国、欧州、シンガポール、シドニー、サンパウロ、東京といったリージョンがあります。地理的に離れた、これらのリージョン間でクラスタ構成にすれば、仮にリージョン全体に関わる大規模災害が起きたとしても、別リージョンでサービスを継続できます」(小山氏)。大規模地震などのリスクを想定すると、その利点は決して小さくないと言えるだろう。

 ただし、実際にAZやリージョンを超えてサーバーを配置するには、AWSとの調整が必要になる。「AWSも、こうした方法については熟知しているので特段の問題はありません」(小山氏)とはいうものの、単にLifeKeeperをインストールすれば済むわけではない点には注意が必要だ。

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