日本IBMは、メインフレームのSystem z、AIXサーバーといったシステム製品事業に関する記者向け説明会を開催した。米国で2014年10月6日に発表された内容の解説だが、セキュリティ面など、ハード/ソフト一体開発のメリットは少なくない。
膨大なデータを含むソフトウェア資産の継承は重要だ。アナリティクスやモバイル対応などをそれに加味し、さらにセキュリティの脅威の広がりを考慮すれば、ハードとソフトを一体化させたメインフレームなど大型サーバーの需要は今後も問題ない──。
日本IBMは2014年10月15日、メインフレーム「System z」とUNIX機「Powerサーバー」など、同社の言うシステム製品に関する説明会を開催した。同社が強調したポイントは3つある。“CAMSS”への対応、セキュリティの優位性、オープン技術との一貫性、だ。
CAMSSとは、クラウド、アナリティクス(ビッグデータ)、モバイル、ソーシャル、セキュリティという、5つの言葉の頭文字をとったもの。「ITが担う業務は既存の基幹業務を軸にしたSystems of Record、CAMSSをはじめとした差異化を実現するSystems of Engagementがあり、それぞれがサポートする事業をコンテキスト・ビジネス、コア・ビジネスと呼ぶ」(日本IBM 理事 ハイエンド・システム担当の朝海孝氏)。
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これらの言葉は米国の著名なマーケティングコンサルタントであるジェフリー・ムーア氏が提唱するものだが、それはさておき、「コンテキスト・ビジネスとコア・ビジネスの間にはデータがある。これが重要であり、これからはデータを念頭においたシステム設計が重要になる」(同)という。
こう前置きした上で10月初めに米IBMが発表した、(1)IBM InfoSphere BigInsights for Linux on System z、(2)IBM DB2 Analytics Accelerator、といったSystem z向けのソリューションに言及した。(1)は企業向けのHadoopディストリビューション、(2)はzに統合するDWHアプライアンス(実体はIBM Netezza)である。
CAMSSのうちA、つまりアナリティクスにフォーカスした製品群であり、IBMによればトランザクション・データの発生と同時に(リアルタイムで)分析を行い、何らかの洞察を得ることができる。
セキュリティに関しては、「z/OSは29年間にセキュリティパッチを発行したのは、わずか40回。パフォーマンスを落とさないようハードウェアで暗号化するなどミッションクリティカルなデータ保護を徹底している。PowerサーバーのAIXもこれに準じる。適正な鍵を持たないアプリケーションソフトが別のメモリー領域にアクセスしようとすると遮断されるので、仮にウイルスが侵入しても阻止できる。アプリケーションがログを書き換えられない仕組みも備える」(同)。なるほど、ハードとOSを一体開発するSystem zはもちろん、自社開発のAIXを擁するIBM製サーバーは、優位かもしれない。
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もう一つのオープン技術との一貫性はどうか? 実は10月初めにIBMは、(3)IBM Elastic Storage for Linux on System z、(4)IBM Cloud Manager with OpenStack for System zも発表している。(3)はIBMのソフトウェア・ディファインド・ストレージ(SDS)であり、System z配下のLinuxサーバーもSDSの一部になる。
(4)のIBM Cloud Manager with OpenStack for System zは、仮想環境を含めたクラウド管理ツール。System z、Powerサーバー、x86サーバー、さらにパブリックなIaaSであるSoftLayerも含め、システムイメージの生成と管理、システム資源の調達の容易化や最適利用などを可能にする。これまではx86系のIBM製サーバー(System xやBladeCenter、PureFlex Systemなど)が対象だった。
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ただこのうちの多くは、システム360が登場して50周年の今年4月9日にアナウンスされている(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/11235)。なお、今回の説明会ではほとんど言及されなかったが、興味深かったのが下図にある「Brain Cube」だ。
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日本IBM常務執行役員の武藤和博氏は「溢れるデータをどう活用するのかが重要テーマ。今、コグニティブの時代に入りつつあり、Watsonの先にはBrainCubeがくる。Watsonは膨大な電力を消費するが、人間の脳はせいぜい10W。BrainCubeはそれを目指している」と話す。