[技術解説]

2014年秋から東京リージョンで利用可能になった「Amazon AppStream」とは?

2014年10月23日(木)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)

アマゾンデータサービスジャパンは2014年10月22日、アプリケーションストリーミングサービス「Amazon AppStream」の概要を紹介する報道関係者向け説明会を開催した。米アマゾンのアプリケーションサービス担当ディレクターのコリン・デービス氏がサービスの概要や事例を紹介した。

コリン・デービス氏米アマゾンでアプリケーションサービス担当ディレクターを務めるコリン・デービス氏

 AWSの「Amazon AppStream」は、アプリケーションをAmazon EC2上で実行、画面データをデバイスにストリーミング配信するサービスである。米アマゾンが昨年11月、開発者向けカンファレンス「AWS re:Invent」で発表した。今年10月より東京リージョンでの提供も開始。国内企業では日産自動車が利用している。

 概要を紹介しよう。AppStreamは、コンピュータリソースを大量に使用するアプリケーションを、デバイスを選ばずに利用するためのサービスだ。例えば、3D CADやシミュレーション、ゲームといったアプリケーションを利用するには、高性能なハードウェアを用意する必要がある。スマートフォンやタブレットで快適に利用するのは難しい。

 AppStreamは、Amazon EC2上でアプリケーションを実行し、その結果だけを画像データとしてデバイスに配信する。AppStreamで使用するEC2インスタンスは、26個のCompute Unitと、15GBのメモリーのほか、NVIDIAのGRID GPUを搭載する。つまり、3D CADやシミュレーションを問題なく動かせるリソースを備える。

 デバイス側に必要なのは、AppStreamクライアントを動かすリソースのみ。優れたCPUやGPU、メモリーなどを備えていなくても、リッチなアプリケーションを利用できる。クライアントはファイルサイズも小さい。700MBのアプリケーションの場合で、クライアントのファイルサイズは概ね5MB程度に収まる。

 サーバーとデバイスは、Amazon STXと呼ぶ独自プロトコルを使ってやりとりする。STXは、ネットワークの状況に応じて、エンコードや転送量を動的に変更し、モバイル通信などでも快適に利用できるようにしている。アプリケーション仮想化をイメージすると分かりやすいかもしれない。画面データのみを転送するため、アプリケーションの内部を不正に閲覧されたり、データを窃取されたりするリスクはない。

 クライアントは、WindowsとMac OS、iOS、Android、Kindle Fire向けに提供しており、今後、Chrome OSにも対応する予定だ。アプリケーションは、プラットフォームごとに書き換える必要がない。1回コードを書けば、クライアントが対応するすべてのプラットフォームにアプリケーションを配信できる。ユーザーはサーバー上のアプリケーションを参照するため、メンテナンス作業も容易だ。変更は即反映される。

 国内では、日産自動車がAppStreamを使用している。コンピュータ上で整備作業を疑似体験する3Dバーチャルシステム「NVTS(Nissan Virtural Training System)」を運用。整備士のトレーニングに使用している。メリットは、ハイスペックなPCを用意しなくても、システムを利用できる点。場所や時間を問わず、必要なトレーニングが受けられる。今後、グローバルでの活用も視野に入れているという。

 アイスランドのCCP Gamesが展開しているする「Eve Online」というゲームは、プログラムの一部に限って、AppStreamを利用している。具体的には、ゲームスタート時のキャラクター作成作業をストリーミング配信し、本編のデータをデバイスにダウンロードさせる。多くのユーザーは、キャラクター作成に時間を費やす。その間に、本編のデータのダウンロードを完了させることで、ユーザーがストレスなくゲームを楽しめるようにしている。

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