世界のクラウドサービスの状況はどうなっているのか−−。それを知ることは、ITインフラを計画したり、先行きを理解したりする上で欠かせない。そんなニーズに格好の資料が公開された。米Gartnerの『Magic Quadrant for Cloud Infrastructure as a Service, Worldwide』がそれだ。IT Leaders読者にはぜひチェックしておいて欲しいドキュメントである。
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米有力調査会社のGartnerが公開した、パブリックなIaaS(Infrastructure as a Service)に関する資料『Magic Quadrant(MQ)for Cloud Infrastructure as a Service, Worldwide』には、衝撃的ともいえる数字が挙がっている(図)。
すわなち、IaaS分野でトップのAmazon Web Services(AWS)が持つリソースは、競合する14社が持つリソースの合計の10倍以上。2番手のMicrosoft Azureは、3番手以下のリソースの合計の2倍のリソースを有する、という。そのうえでGartnerは、「IaaSのリーダーに位置づけられるのは、この2社」と結論づけている。
今回のMQについてGartnerは、同社が提唱する「Bimodal IT(ITの2つの流儀)」の「Mode1(トラディショナルなIT)」と、「Mode2(開発生産性やビジネスの俊敏性)」の両方の観点から作成したという。なぜなら、IaaSの使用は、これまではMode2、つまり新しいサービスやアプリケーションが牽引してきたが、最近の需要の伸びはMode1に属する既存システムのコスト削減や安全性、セキュリティが支えているからだ。
AWSの強み(Strengths)についてGartnerは、多様な顧客ベースと、斬新なサービスから基幹業務アプリケーションまでの広範なユースケースとを持ち、圧倒的なシェアを確保していると評価する。同時に「Thought leader(方向性を示す指導者)」に位置づけ、それらが相まってソフトウェア開発者を含めたパートナーエコシステムを生み出しているという。
しかし万能ではない。Gartnerは注意点(Cautions)として、管理が複雑であり、価格面でもリーダーだがオプションが多い点を挙げ、サードパーティーの管理ツールの利用を推奨する。
一方のMicrosoft Azureの強みとしては、IaaSとPaaS(Platform as a Service)の統合、AWSに匹敵する新機能のリリース、オンプレミス環境(Hyper-Vや Windows Server, Active Directory、System Center)と開発環境(Visual Studio、Team Foundation Server)、そしてMicrosoftのSaaS(Software as a Service)とのシームレスな連携などを挙げる。注意点としては、企業ユースに応える可用性や性能などは必ずしもまだ充足できていないと指摘する。
なお、図から明らかなように、日本のクラウド事業者として富士通とNTTコミュニケーションズの2社がリストアップされている。「ニッチプレーヤー」の位置づけだが、ワールドワイド版のMQにおいて15社に入っているだけでも上位の証だろう。