[インタビュー]

「オラクルはPaaSでクラウドファーストになる」米オラクルのミドルウェア戦略担当VP

2015年6月4日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

米オラクルがクラウド事業に本腰を入れている。2020年にクラウドサービス事業者としてトップに立つのが目標だ。日本市場でも2015年4月から各種クラウドサービスの本格展開を開始した。中でも、データベース「Oracle」のクラウドサービスを含むPaaS(Platform as a Service)である「Oracle Cloud Platform」には、ユーザー固有のアプリケーションの動作環境として力が入る。オラクルのPaaSとは、何を指し、どこを目指すのか。Fusion Middleware製品管理・戦略部門バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal(シッダールタ・アガワール)氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=IT Leaders編集部)

米オラクルFusion Middleware製品管理・戦略部門バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal(シッダールタ・アガワール)氏米オラクルFusion Middleware製品管理・戦略部門バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal(シッダールタ・アガワール)氏

−−オラクルが「Oracle Cloud Platform」で考える、パブリックPaaS(Platform as a Service)の価値はなにか。

 オラクル製品を利用するために必要な煩雑な作業を省くことにある。煩雑は作業とは、ソフトウェアのインストールや種々の設定、バックアップの用意などだ。これにより、IT投資の多く占めている運用・管理コストを削減すると同時に、利用企業にはアジャイル(俊敏)なアプリケーションの構築・運用が可能になる。

 例えば、データベースのOracleを利用するためには80〜90の手順を踏む必要がある。インストールからIPアドレスの設定、セキュリティドメインの取得などなどだ。これがクラウド上なら5〜6ステップで済む。ハードウェアの調達を含めれば、データベースのインスタンスを立ち上げるのに、オンプレミスなら4〜6週間かかっていたものが30分ほどで完了する。これは、当社のWAS(Web Application Server)製品である「WebLogic Server」などでも同様だ。

 ソフトウェア製品のライフサイクルに沿って、バックアップの作成やパッチプログラムの適用などは当社が実施することになるが、当然ながら人手ではなく、自動化を図っている。そんな自動化が可能なのかと思うかもしれないが、オラクル製品のことを最もよく知っている当社なら可能だ。自社で開発している製品だから当然である。

 またOracleのクラウドは、中堅・中小企業やスタートアップ企業にとっては、大企業が利用しているのと同等の機能をサービスとして使えるというメリットがある。必要なときに必要なソフトウェアの機能をオンデマンドで使える。

−−Oracle Cloud Platformでは、オンプレミスとの“同一製品、同一アーキテクチャー”を強調している。

 オンプレミスで開発・運用しているアプリケーションをクラウド上に移行するだけでなく、クラウド上で開発したアプリケーションをオンプレミスで運用することを考えているからだ。開発・テスト環境としてクラウドを使い、完成したアプリケーションをオンプレミスで運用するケースは、クラウドの有効利用策の1つだ。

 だから、Oracleデータベースの機能を提供する「Database Cloud Service」や、WebLogic Serverの機能を提供する「Java Cloud Service」、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向体系)基盤のための「SOA Suite」を使う「Integration Cloud Service」、BPM(Business Process Management)基盤の「BPM Suite」の「Process Cloud Service」などを用意している。

 Integration Cloud Serviceなどは、これまではオンプレミスでしか利用できなかった機能だし、Process Cloud Serviceを使えば業務部門のユーザーが自ら業務プロセスを設定できるようになる。「BI Cloud Service」も同様にエンドユーザーが自身でデータ分析に取り組める。

−−Database Cloud ServiceやJava Cloud Serviceなどは同一製品/同一アーキテクチャーのミドルウェア製品の想像が付く。だが、Cloud Serviceにある「Mobile」や「Internet of Things」といったサービスは、アプリケーション領域に近づいており、該当するオラクル製ソフトウェアもないのではないか。

 Oracle Cloud Serviceのメニューには、これから提供するものも含まれている。2016年3月まで12〜15種類のサービスを投入する予定だ。MobileやInternet of Thingsのサービスも、これに該当する。新サービスを実現するためのソフトウェアは現在、開発中である。

 例えば、Mobile Cloud Serviceでは、複数種のOSが混在するモバイル端末上で動作するアプリケーションをクラウド上で開発できるようになる。プッシュ通知やデータの同期なども取れる。企業におけるモバイル活用ではバックエンドシステムとの連携が不可欠なだけに、Integration Cloud Serviceとの連携が有効になるだろう。

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