米オラクルがクラウド事業に本腰を入れている。2020年にクラウドサービス事業者としてトップに立つのが目標だ。日本市場でも2015年4月から各種クラウドサービスの本格展開を開始した。中でも、データベース「Oracle」のクラウドサービスを含むPaaS(Platform as a Service)である「Oracle Cloud Platform」には、ユーザー固有のアプリケーションの動作環境として力が入る。オラクルのPaaSとは、何を指し、どこを目指すのか。Fusion Middleware製品管理・戦略部門バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal(シッダールタ・アガワール)氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=IT Leaders編集部)
Oracle Cloud Platformのゴールは、コードを書くことなしに様々なアプリケーションを連携させて、必要なシステムを構築できるようにすることだ。そのために、Integration Serviceには、レコメンデーション(推奨)エンジンも組み込む。あるアプリケーション上でビジネスチャンスにつながる変化があれば、それを関連するアプリケーションに知らせ、次の行動が取れるようにする。
−−であれば今後は、Cloud Platform上でまず新サービスを提供するためのソフトウェアを開発し、機能が固まってくればオンプレミス用の製品としても提供するという順序になるということか。
既存のミドルウェア製品などの機能強化も継続するが、新しいサービス領域については、クラウドファーストになる。そこで開発したソフトウェアは、Engineered Systemの「Exalogic Elastic Cloud」に搭載してオンプレミス用に提供する。
Exalogic Elastic Cloudでは、IaaS(Infrastructure as a Service)環境としてOSS(Open Source Software)の「OpenStack」にも対応している。OpenStackは良い標準ではあるが、大規模システムへの導入は困難な面がある。だから当社は2013年3月にNimbulaを買収したのだ。当社のCloud PlatfomでもNimbulaのテクノロジーを利用しているし、Exalogicにも提供している。
−−PaaSを提供する事業者の多くがOSSの「CloudFoundry」をベースにしている。オラクルとしては、どうか。
CloudFoundryも良いソフトウェア群ではあるが、それは新規に開発するアプリケーションならという条件付きになる。既存のアプリケーションをCloudFoundry上で利用するためには書き直しが避けられない。
当社が同一製品/同一アーキテクチャーにこだわるのも、ここにある。既存のアプリケーションを書き換えることなしにクラウド上でも利用可能にするためだ。実際、ある企業は世界中で5カ国15サイトで運用していたシステムをOracle Cloud Platformに移行したが、その際にアプリケーションを書き換える必要はなかった。同社ではクラウドに移行したことでDBA(Data Base Administrator:DB管理者)が不要になっている。
ただクラウド環境において最終的に最も重要なのは、すべてがAPI(Application Programming Interface)で管理できるようにすることだ。他のアプリケーションとの統合・連携が可能になり、システムの拡張性や柔軟性を確保できる。
−−Oracle Cloud Platformの利用料金は完全な従量制になっているのか。
そうだ。サブスクリプションの料金体系をサイト上で確認できる。サービスによって、時間当たりや、1人当たりの月額料金など尺度の違いはあるが、いずれも利用した分だけ課金される従量制である。
ユニークな仕組みとして、プリペイド型の支払い方もある。当社、営業担当者との事前協議が必要だが、どんなシステムを,どの程度使いそうかを事前に設定し、年間利用料に相当する額を予め購入しておく。そこから実際にサービスを使用した料金を引き算していく。
新たなサービスを利用し始める度に当社に知らせる必要もないし、予算案も立てやすくなる。モバイルアプリケーションなどアクセス数を予測しづらかったり新たな機能を次々と追加していくシステムにおいては、プリペイドのほうが柔軟にシステムを開発・運用できるだろう。