日本のスマートフォン市場では50%以上のシェアを誇るiPhoneも、世界ではAndroid端末に大きく水を空けられている。その要因のひとつとして、東南アジアやアフリカの新興国で急速に普及が進んでいる低価格スマートフォンの存在が上げられる。新興国の中でも、特に日本と親しみのある東南アジアの低価格スマートフォン市場に、クールジャパンコンテンツで参入しようとしているベンチャー企業がある。それがグート(Gooute)だ。ベンチャーといえどもこの分野で有力なパートナーが脇を固めており、あなどれない。今後の動きに注目していくべき"クール"なベンチャー企業だ。
クールジャパンコンテンツを「+α」に
各国のスマートフォンユーザーは、グーミィから日本のアニメやゲーム、音楽といったクールジャパンコンテンツを購入することができる。この課金プラットフォームからの売上げは、コンテンツプロバイダーやクリエーター、キャリア、そしてスマートフォンメーカーに分配される。スマートフォンメーカーにとっては、この分配金が端末販売以外の「+α」の収益源になるという仕組みだ(図2)。
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本社をシンガポールに置くグートは、まずはグーミィを、クールジャパンコンテンツが人気のアジア企業向けに提案していく。特に狙いどころは、東南 アジア各国のメーカー向けにビジネスを展開する中国や台湾のデバイスメーカーやODM/OEM事業者だ。すでに「第一弾として、台湾ASUSTeK社の子会社であるASUS Cloudおよび中国のODM/OEM事業者4社との提携が決まっている」(横地氏)という。
脇を固めるのは、日本のシステム開発会社である見果てぬ夢と、香港のクラウド向けインフラ提供会社、Power-All Networksの2社だ。見果てぬ夢は、特にモバイルやクラウド関連分野の受託開発会社で、大手企業の案件にも多く携わってきた実績を持つという。また、Power-All Networksは、クラウド向けネットワークシステムを展開するグローバル企業。親会社は、電子機器受託生産(EMS)で世界最大規模のビジネスを展開している台湾のFoxconn Technology Groupである。
今回は、Power-All Networksがグローバルに展開するクラウド基盤の「Inter-Cloud」をグートに提供し、見果てぬ夢がシステム開発を担当する協業体制となる。そのほか、デジタルハリウッドや、フジテレビ系のフジスマートワークが協力を申し出ているという。両社のクリエーターやライターが、クールジャパンコンテンツの情報発信や制作を行っていく。若いクリエーターにとっては、世界に打って出るチャンスともなる。
ASUSTeKなど提携が決まっている中国、台湾のメーカーは、2015年の年末モデルからグーミーをプリインストールしたスマートフォンの販売を開始する。グーミーが搭載される低価格スマートフォンの台数は、2016年8月時点で1千万台から2千万台。2017年8月には4千万台から6千万台まで増える見通し、というのがグートの試算だ。
グーミーの提供時期は2015年内を計画。Android、iOS、Windowsなど主要OSに対応し、日本語、英語、中国語、スペイン語など複数の言語をサポートして提供される予定となっている。またグートは、「2015年の年末から2016年の年始にかけて、新たなコンセプトに基づいた企画・デザインを日本で行い、海外市場向けに複数のメーカーと共同で発表する」(横地氏)と、新たなプロジェクトにも取り組んでいる。今後は、先進国のミッドレンジ市場も視野に、アフリカ、南米、北米へとマーケットを拡大させていく考えだ。