「CDN(コンテンツデリバリネットワーク)」は、WebページやWebコンテンツの安定的な配信を支えるサービスだ。普段CDNを気に掛けるユーザーはほとんどいないだろう。この分野で世界のトップに立つアカマイ・テクノロジーズが「知られざるインターネットの巨人」といわれるように、常に縁の下の力持ちなのがCDNだ。しかし、そのCDNにも新たな波が押し寄せており、ユーザーにとって、もっともメリットのあるCDNを選べる時代になってきた。米Limelight Networksも、選択肢のひとつとなる有力なCDN事業者として知っておくべき企業だ。
DDoS対策機能を加えた新バージョン
ここに紹介するライムライト・ネットワークスは、独自の集中型アーキテクチャーで従来型のデメリットを克服し、アカマイに次ぐ規模を誇るCDNベンダーだ。同社の場合、集中型のPOP2カ所を専用線でつなぐというPOPの階層構成を組んでいる。また、各POPではキャッシュサーバーも階層構成を組んでおり、HTTPとHTTPSを共通プールに置いておける(図3)。

拡大画像表示
この構造により、各POPの機能差が小さく、どこの場所からでも安定的なパフォーマンスの提供が可能となった。POPの階層構造によりキャッシュを一方のPOPに蓄積できるため、キャッシュヒット率も高いという。更に、HTTPとHTTPSが共通プールに置いてあることで、比率を柔軟に変えることが可能となっている。今後増加が予想されるHTTPSへの対応環境が整っているということになる。

ライムライト・ネットワークス・ジャパンの田所隆幸カントリーマネージャーによると、アカマイとライムライトのアーキテクチャーの違いは「そもそもの目的が異なっていた」ことにあるという。アカマイは、ホームページを「サクサク」見られるようにするためのアーキテクチャーを採用している。一方のライムライトは元々、動画などの重いコンテンツをスムーズに配信するための技術開発に取り組んできた会社だ。そのため、POP内のシステムが高度化されている。
そのライムライト・ネットワークス・ジャパンは2015年12月8日、CDNプラットフォーム「Limelight Orchestrate」のメジャーバージョンアップを発表した。新バージョンの「V3.0」では、インフラ、ソフトウェアを強化するとともに、セキュリティ機能を実装している。
コンテンツを安定的に高速配信するための仕組みとして、クラウド型ストレージ「Orchestrate Storage」の可用性と拡張性を向上させた。管理ポリシーを自動化し柔軟な拡張性を実現、ファイルサイズやオブジェクト数の制限なしに利用できるようになった。

不要なファイルを削除するパージシステム「SmartPurge」は、高速かつ正確さが売りだ。企業がコンテンツを削除したい場合、通常の大規模CDNでは相当な時間を要することになる。SmartPurgeは、削除依頼から「ほぼリアルタイムに削除が可能」(ジャパンSEリーダー 加藤久雄氏)だという。このパージシステムは「業界最速」を自負している。
そして今回、新たに加わったセキュリティ機能が「DDoSアタックインターセプター」だ。その名の通りDDoSアタックを「インターセプト(妨害・横取り)」するサービスとなる。通信をミラーリングして常時監視、DDoSを検知すると攻撃トラフィックを軽減して正規トラフィックのみを流す「スクラビングセンター」とも常時連携している。監視から防御までがシームレスに行われるためインターセプが迅速で、ダウンタイムを可能な限り縮めることができるという仕組みになっている。
モバイルの普及や動画トラフィックの急増など、コンテンツ配信市場は今後も拡大していくと見られている。コンテンツ配信企業に、高いパフォーマンスを提供するだけでなくDDoS対策というセキュリティ機能も併せて提供することで、「次世代CDN」を担うライムライトの存在感を示していきたい考えだ。