これまでのビジネスモデルを見直さなければ、異業種からも参入してくる新興企業に市場を奪われかねない時代を迎えている。そうした中で、生き残りの鍵を握るのがビジネスモデルを実現するアプリケーションであり、開発のアジャイル化だ。そのための中核技術として注目を集めているのが、コンテナ技術とりわけ「Docker」である。そのDockerを“賢く”使いこなすためのPaaS(Platform as a Service)基盤を実現するのが「OpenShift Enterprise 3」だ。
実行環境と共に
CI/CDを支える開発環境まで包含したPaaS基盤
とはいえ、Dockerを使うだけで、このようなメリットが実現できるわけではない。その価値を最大限に享受できるようになるには、それなりの事前準備や前提知識が必要となる。
具体的には「開発環境の作り方」「ビルド手順の自動化」「イメージのバージョン管理」「開発環境から本番環境へのイメージ切り替えの正しい手順」「起動・停止の適切なタイミング」「無停止切り替えの確立された手順」「ネットワークへの影響の把握」「アプリケーションが異常終了した場合の対処」「BCP/DR環境の構築」などなど。多くのノウハウが求められる。
これらのノウハウをユーザーは時間をかけてDockerの基礎から学んでいくしかないのだろうか。そうした苦労や負担を軽減すべく、レッドハットが提供しているのが、OSS(オープンソースソフトウェア)のPaaS構築用ソフトウェアである「OpenShift Enterprise 3」だ。「Dockerを知らない人でも、“賢く”使いこなせる。単なるPaaSの概念を超えたプラットフォームだ」として、岡下氏は次のように説明する。
OpenShift Enterprise 3が従来のPaaS基盤と大きく異なっているのは、CI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)を支えるアプリケーション開発環境までを提供している点。実行環境としても、Dockerのオーケストレーション機能を提供するKubernetesを採用するほか、JBoss Enterprise Application Platformや DB、Web UIなどレッドハッドが保有するあらゆる環境を包含している。さらに、Dockerの技術を意識していなくても、OpenShiftで開発されたアプリケーションはすべて、ピュアなDockerアプリケーションとなる。そのDockerアプリケーションは、OpenShiftの外にエクスポートでき、他の環境でネイティブなDockerアプリケーションとして動作させることができる。
「Dockerアプリケーションを取り込んで動作させることができるPaaSは他にも存在するが、PaaS環境で開発したアプリケーションが必然的にDockerアプリケーションにビルドできるプラットフォームは、OpenShiftだけ。このことが“OpenShiftは、Dockerを知らなくてもDockerを使いこなせるプラットフォームである”という所以だ」(岡下氏)。
この特徴を簡単に利用可能にするのが、あらかじめ用意されている「テンプレート」だ。その手順に沿うことで、開発からテスト、本番運用、更新までアプリケーションのライフサイクル全体に対し、環境構築手順の標準化が図れ、ビジネスニーズに即したアジャイル化を実現できる。
「従来の手順書に基づいた標準化は人手に依存しており、どうしても個人ごとの開発環境にバラツキが生じてしまうことが避けられなかった。テンプレートを活用し開発環境の構築を自動化すれば、標準化に伴う時間短縮とコスト削減など、様々なメリットを得られる」と大溝氏は語る。
トレーニングコースを通じて
300人以上のDocker技術者を育成する
さらに望ましいのは、こうしたテンプレートを自力で作成できるスキルとノウハウを社内に育成することだ。中井氏は、「OpenShiftは標準で50種類以上のテンプレートを用意しているが、それらですべての要件に対応できるわけではない。Dockerを学び、自社ビジネスに最適なテンプレートを迅速に作り、自在にカスタマイズできるようになれば、企業はアプリケーション開発をベースとした競争力をさらに強化できる」と強調する。
レッドハットとしても、人材育成を積極的に後押ししていく考えだ。「OpenShiftのトレーニングコースを通じて、2016年内に300人を超えるDocker技術者をユーザー側に育成したい」と、岡下氏は目標を示す。
そのために、Dockerの真価を即座に体感できるPaaS基盤の普及にも乗り出す。具体的には、OpenShiftをAWSの東京リージョンにセットアップしマネージドサービスとして提供する「OpenShift Dedicated」の提供と、OpenShiftをさまざまなクラウド環境にデプロイしサービスとして提供していくSI/開発パートナーの拡大といった施策を展開する。
破壊的なビジネスモデルで参入してくる新興企業を迎え撃つ企業のトップにとって、開発チームを本来の役目であるアプリケーション開発に専念させることが急務だ。その際には、運用チームの作業負荷を軽減し余力がある人材は開発チームに回すなど、組織全体としての底上げを図っていくことが求められる。
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