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[市場動向]

クラウドシフトの潮流が求める、国内データセンター事業者のビジネス変革

『インターネット白書2016 20年記念特別版』クラウドサービス/データセンタービジネス動向より

2016年4月4日(月)河原 潤(IT Leaders編集部)

企業/社会インフラを担うデータセンターのクラウドシフトが加速している。外資系事業者が日本での攻勢を強める中、サービス品質やサポート力といった国内事業者ならではの差別化が生き残りの必須条件となっている。自社の要件にマッチしたデータセンター/クラウドサービスを選ぶにあたって、サービス提供側の全体動向を確認しておこう。

 クラウドサービスの普及が後押しするかたちで、データセンター市場全体の活況が続く。IDC Japanの「国内データセンターサービス市場予測」(2015年10月21日公表)では、2015年の市場規模を前年比7.7%増の1兆429億円と、初めて1兆円を超えると予測した。前年度の同調査での成長率(8.2%)からやや鈍化したが、市場はその後も成長を続けて、2019年には1兆3386億円に達すると見積もられている。

外資系ITベンダーが国内市場の成長を牽引、DC専業もクラウドシフトに向かう

 同調査では、2019年までの事業者種類別売上額予測も公表している(図1)。IDCによると、2015年の事業者種類別シェア予測では、ITベンダー/ SIerが63.6 %、通信事業者が22.3%、データセンター専業事業者が14.2%となっている。

図2:海底光ケーブルの整備による国際通信ネットワークのイメージ図 (出典:沖縄県商工労働部情報産業振興課「2014-2015 情報通信産業立地ガイド」)

 このグラフで明らかなように、国内データセンター市場を牽引するのは、SaaS/PaaS/IaaSといったクラウドサービスを提供する大手ITベンダー/ SIerだ。特に2014年は、日本マイクロソフトの「Microsoft Azure」「Office 365」、ヴイエムウェアの「vCloud Air」、SAPジャパンの「SAPHANA Enterprise Cloud」、日本IBMの「SoftLayer」など、クラウドサービスを提供する外資系ITベンダーが国内にデータセンターを相次ぎ開設して決定的な流れを作った。2015年には「Microsoft Dynamics CRMOnline」の国内データセンター提供が始まり、日本オラクルの「OracleCloud Platform」も2015年内提供で準備を進めている。

 富士キメラ総研の「データセンタービジネス市場調査総覧 2015年版」(2015年4月27日公表)に示されたサービス提供形態ごとの市場規模を見ると、2014年は、前年比でホスティングが横ばい、ハウジングが微増、クラウドが36.0%増であった。今後、ユーザーニーズの高まりと共に、データセンター専業事業者におけるクラウドシフトの加速が予想される。

仮想化集約が進み、データセンターの延床総面積は減少に転じる

 市場規模の成長とは逆に、データセンターの延床総面積や収容サーバー/ラック数は減少傾向にある。ミック経済研究所は「データセンタ事業者のファシリティと売上動向」(2015年8月17日公表)で、国内データセンターの延床面積伸び率は2014年から急減し、2018年にはピークだった2013年の半分以下の伸び率になると予測する。

 延床面積減少の要因として、各事業者のデータセンターでサーバー/ラックの集約がさらに進んでいることが挙げられる。近年の仮想化/クラウド技術の進化はめざましく、現在では「物理サーバー200台を数台の仮想サーバーに統合」といった、高いリソース集約効果を実現した事例も珍しくない。加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う首都圏での建設コスト上昇も、データセンターの省スペース化に拍車をかける可能性がある。

都市型データセンターの新設ラッシュが続くも、建設コスト上昇で今後減速か

 データセンターは都市型と地方型で特性が異なる。交通アクセスやネットワークレイテンシ(遅延)の面で有利な都市型データセンターは、クラウドシフトを追い風に新設ラッシュが続く。2015年には、2月に「netXDC千葉第2センター」(SCSK、千葉県印西市)と「文京エリア第5データセンター」(ビットアイル、東京都文京区)、4月に「Nexcenter東京第5データセンター」(NTTコミュニケーションズ、東京都内)、6月に「EINS/VDC東京第2」(インテック、東京都三鷹市)、8月に「TELEHOUSE OSAKA2」(KDDI、大阪市)がオープンしている。

 また、現在建設中のものでは、2016年2月に「TELEHOUSE TOKYOTama 3」(KDDI、東京都多摩市)、1~3月に「大阪第5データセンター」(NTTコミュニケーションズ、大阪市内)と「IBXデータセンターTY5」(エクイニクス、東京都内)、4月に「NEC神戸データセンター」(NEC、兵庫県神戸市)、「館林データセンターC棟」(富士通、群馬県館林市)、6月に「GDC大阪」(TIS、大阪市内)、7月に「明石システムセンターF棟」(富士通、兵庫県明石市)が開設予定となっている。

 上記のうち、印西市や三鷹市、館林市、明石市などは大都市郊外型と呼ぶのが正確だろう。大都市中心部ほど収容可能なラック数制限などを受けず、地価、および建設や電力にかかるコストも低く抑えられてアクセスにも不便を感じない、バランスのよい立地と言える。

 このように活況を呈する都市型/近郊型データセンターだが、そろそろ飽和状態に近づいており、また、前述した東京オリンピック開催による建設コスト上昇の影響も受けて、今後はペースダウンも予想される。

運営メリットと企業ニーズの合致で進展する地方型データセンター

 一方、地方型データセンターも市場で存在感を示している。広大で安価な敷地、省エネルギー運営、地方自治体の誘致活動による支援といった事業者側のメリットと、2011年の東日本大震災以降に顕著な、企業からのBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)ニーズの高まりが合致したかたちで、市場規模の伸び率に関しては実のところ都市型を上回る。主なものでは、2015年9月に「ミライ大垣第2データセンター」(ミライコミュニケーションネットワーク、岐阜県大垣市)とデータセンター福岡空港(キューデンインフォコム、福岡県福岡市)が最新のファシリティをまとって開設している。

 また、「石狩データセンター」(さくらインターネット、北海道石狩市)が先鞭をつけた自然冷却システムは、寒冷地域を中心に採用が進む。2015年12月に、雪氷冷却を採用し機械空調ゼロを目指す「寒冷地型エクストリームデータセンター」(青い森クラウドベース、青森県六ヶ所村)が、2016年2月に「白河データセンター3号棟」(IDCフロンティア、福島県白河市、写真1)が、それぞれ竣工予定となっている。

写真1:IDCフロンティアの白河データセンター(出典:IDCフロンティア)

 一方、空調では不利だが震災リスクが小さく地価も安い沖縄県では、県が推進する「沖縄クラウドネットワーク」の基盤施設が完成した。2015年4月に供用を開始した公設民営の「沖縄情報通信センター」(同県うるま市、データセンター運営事業者は沖縄データセンター)がそれだ。同センターを中核に県内のデータセンターをクラウド技術で連携させる。これは沖縄をアジアのITハブ拠点にすることを目指す「おきなわSmart Hub構想」に基づくプロジェクトで、シンガポール、香港、本州を結ぶ海底光ケーブルが沖縄に接続されるタイミング(2015年内を目途に陸揚げ作業中)で完成を迎える(図2)。

図2:海底光ケーブルの整備による国際通信ネットワークのイメージ図 (出典:沖縄県商工労働部情報産業振興課「2014-2015 情報通信産業立地ガイド」)
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