筆者らの分析チームは、「KDD Cup 2015」というデータ分析の国際大会で2位に入賞しました。前回までは、この競技を題材にしてデータサイエンティストの思考法を紹介してきました。今回は、企業がビジネスのために取り組むデータ分析に注目し、競技との違いから、企業のデータ活用における思考法を整理してみます。
前回まではKDD Cupを題材に、筆者らがモデルを構築する過程での思考プロセスや組織マネジメントについて紹介してきました。しかし筆者らは、普段はデータ活用やデータ分析、そのためのIT基盤の構築といったIT関連ビジネスに携わるコンサルタントや研究者です。そうしたビジネスのためのデータ分析と競技時のデータ分析には何か違いがあるのでしょうか。
KDD Cupのような競技では、モデルの精度だけで優劣が決まります。これに対しビジネスでは収益の最大化が求められるわけですから、競技とは異なる思考が求められます。ビジネスのために日々、データを分析している筆者は、たまに競技に参加すると、そのシンプルさをとても心地よく感じることすらあります。両者が異なる証左と言えましょう。
ビジネスではどのような思考がポイントになるのでしょうか?以下では、ビジネスと競技を比較しながら、ビジネスにおけるデータ活用の特徴について考えるとともに、これからのデータ活用ビジネスを展望してみようと思います。
既存データさえビジネスの“武器”として活用できていない
最近の各種ニュースでは、「ビッグデータ」「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」「人工知能」といったキーワードをよく見かけます。背景にはセンシング技術やストレージ技術の革新により多様なデータが活用できるようになったことが挙げられます。
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