経費管理クラウドサービスで急激にシェアを伸ばしているのが、SAPのグループ企業であるConcur(コンカー)だ。2011年の日本進出からわずか5年で国内シェアは5割超えを果たしており、毎年倍々ゲームで成長を遂げている。そのコンカーが次に目を付けたのが「請求書管理」。三村真宗社長はこの新サービスについて「経費管理と並ぶ第2の柱に成長させたい」と意気込んでいる。
企業の請求書に扱いについてコンカーが、CFO(最高財務責任者)育成団体である日本CFO協会と行った調査では、請求書の業務品質についての課題が明らかになっている。請求書の「データ入力が大きな負荷となっているか」という問いに対し、「思う」と答えた企業が58%。「請求書原本と入力内容の突合作業が大きな負荷となっている」という問いで「思う」と答えたのは更に多く74%だった(図1)。
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コンカーによると、これは生産性についての課題ということになる。「紙ベース」「手作業」という企業の現状が担当者の負荷に結び付いているのは明らかで、それを解決するのが「データ化」「自動化」だ。
コンカーが経費精算の「Concur Expense」、出張費の「Concur Travel」に続く新たなサービスとして発表した「Concur Invoice」は、紙の請求書をデータ化して、申請・承認のプロセスを自動化するサービスだ。これを使えば、月末の恒例行事となっている、たまった請求書を一気に処理する手間が省けるという。
サービスは、OCR(光学文字認識)による無料サービスとBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)による有料サービスを用意した(図2)。
無料サービスは、紙の請求書をPDFにしたものを、Concur Invoiceに組み込まれたOCRエンジンで読み取りデータ化する。OCRの場合、読み取り精度は100%というわけにはいかないので、コンカーから請求書データとして作成されたものを、企業の担当者がチェックして補正する作業が発生する。担当者による補正を終えたものが電子ワークフローで管理職の承認、経理の確認を経てERPに自動入力される。
有料サービスは、PDF化された請求書情報を、コンカーがフィリピンのマニラに設立した「Concur BPOセンター」に送る。センターに集積された情報をOCRで自動読み取り後、担当者にかわってBPOセンターのスタッフがデータ品質を目検、補正作業を行う。入力された請求書を担当者が確認、電子ワークフローで管理職の承認、経理の確認を経てERPに入力される。
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欧米では一般的に、請求締めは当該案件の終了時点で行われるという。月ごとに締める「月次締め」は日本独自の商習慣で、今回Concur Invoiceを国内展開するにあたって月次締めに対応した機能を新たに搭載している。そのほか、接待などでの同席者のトラッキング機能や軽減税率への対応も、日本向けの新機能として盛り込まれている。
また、タクシー配車サービスのUberや宿泊シェアリングサービスのAirbnbといった急成長中のデジタルサービスとの連携サービスもConcurは進めている。Concur App Centerパートナーと呼ばれる他社サービスとのエコシステムを構築、API連携でシームレスな連動を可能にした。
日本でも他社サービスとの連動を推進していく考えで、今回発表したConcur Invoiceでは、B2B用ECプラットフォームを提供するインフォマートの「BtoBプラットフォーム請求書」との連携や、複合機ベンダーやスキャナベンダーとのOCR対応サービスなど、複数企業との連携に基づくオプションサービスを用意している。