[インタビュー]

「個々人がBIツールを選ぶ“BYOT”の時代に」米Qlikのディレクターに聞くBIツールの最新事情

2016年6月2日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

データの分析・可視化に利用するBI(Business Intelligence)ツールには様々な製品がある。その中で一般利用者向けの、いわゆる“セルフサービスBI”で気を吐くベンダーの筆頭は米Tableau Softwareだろう。しかし他ベンダーも虎視眈々と巻き返しを図っている。その1社が「QlikView」や「Qlik Sense」を持つ米Qlikだ。調査会社の米ガートナーの資料でもTableauと同等のポジションになった。来日した同社ディレクターにBIツールの最新事情を聞いた。

−−よく比較されるTableauとQlikについて聞きます。ガートナーのMQにおいて2015年はTableau優位でしたが、今年は、ほぼ同等になりました。これをどう解釈していますか?他の競合企業はどうでしょう。MQではMicrosoftの「PowerBI」の評価も高いです。

 2年前にTableauがいいポジションだったのは事実ですが、差があったのはMQの縦軸である「Ability to Execute」です。これは大まかに言えば、売り上げ目標に対してどこまで達成できたかを評価するもので、ソフトウェアの品質や顧客価値はそれほど重視されていませんでした。もちろん業績が素晴らしいのは評価されるべきですが、2016年は両社ともに拮抗しています。

−−確かに2015年の売上高を見るとQlikは6億1270万ドル、Tableauは6億5360万ドルと大きくは変わりません。ただ前年から増収率はQlikの23%に対し、Tableauは58%と差があります。

 マーケットへのメッセージも影響しました。Tableauのそれはビュジュアライゼーション(可視化)の問題にフォーカスしたシンプルなものでした。Qlikはシンプルな問題と同時に、複雑な問題も解決するメッセージのため、やや分かりにくかったと思います。しかし今は、マーケットが我々のメッセージを理解し始めています。

 ビュジュアライゼーションに特化したツールは特定のデータを多角的に分析するにはいいのですが、関連しそうな複数のデータを辿って本質を分析するのは難しい。このことが理解されてきているのです。現実にTableauとぶつかることは多いのですが、仮に我々が(Tableauに)負けて失注したとしても、少し後にQlikに戻ってくる商談も増えています。

 Tableau以外について言えば、Microsoftも米SASもすべてが競合です。しかし、そうした企業よりは、まだ見ぬ企業が競合になる可能性が大きいかも知れません。既存の競合については、ある程度の戦略が見えるので対処できますが、そうでない企業は動きが見えませんからね。

−−そもそもTableauの製品ラインはシンプル。QlikはQlikViewとQlik Senseと2系統あります。なぜ2系統の製品ラインが必要なのでしょう。

 元々はQlikViewが中核製品でした。それを根本から見直した時、QlikViewで今日あるニーズの多くに答えられるかというとそうではないという結論になりました。そこでQlikViewの優れた部分を引き継ぐ形でゼロからQlik Senseを開発したのです。QlikViewは今も支持されていますし、価値提供できているので今後も進化させます。

 ただ我々がイノベーションのパワーを注いでいるのは、Qlik Senseです。QlikViewの特徴は、ユーザーが迷うことなく簡単に分析できるようにする“ガイデッド・アナリティックス”ですが、Qlik Senseは5つのケースすべてに対応します(図2)。ですのでファーストユーザーや迷っているユーザーにはQlik Senseを推奨しています。

図2:分析の5つのケースとQlik製品のカバー範囲図2:分析の5つのケースとQlik製品のカバー範囲
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 一方、複雑に見える要因の1つには、「Analytics Platform」や「Data Market」などの存在もあるでしょう(図3)。PlatformではQlik単体ではなく、オープンに様々なツールが連携する方向を志向しています。またData Marketはクラウド上のデータ・マーケットプレイスであり、様々なオープンデータを入手でき、 Qlik SenseとQlikViewに統合されているので簡単に使える。気象や人口収入など日本のデータもあります。

図3:Qlik製品ポートフォリオ図3:Qlik製品ポートフォリオ
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−−最後に例えば機械学習の利用など、将来の方向性を聞かせて下さい。

 機械学習やAI(Artificial Intelligence:人工知能)をどう組み込むかは、ロードマップ上、まだ言えることはありません。しかし2つコメントさせて下さい。1つは、別の技術を組み込む可能性については常にR&D(研究開発)していることです。当社の「イノベーションラボ」では多くのことにトライしています。例えば仮想現実(VR)や3Dプリンターの利用です。分析をどう見ていくかという点で、こうしたことにトライしているわけです。

 もう1つは、新しい何かを組み込む時、自分たちでやるのか、他社と協業するのかを見ていることです。Qlikだけですべてのニーズを満たすのは簡単ではありません。そこでプラットフォームのアプローチが大事になります。プラットフォームにアナリティックスのエンジンが組み込まれていて、例えばWeb開発者は当社製品を使って必要な分析機能を実装できます。そういった意味で常にテクノロジーの進化には注意を払っています。

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