モバイル環境を前提にしたワーキングスタイルの考察で、見落としがちな機器の対象の1つにプリンターがある。文書の電子化も進み印刷頻度は減っているとは言え、紙の利用をなくせないのも事実だ。こうした中、世界のプリンターメーカーにプリントマネジメントツールを提供するのがチェコ共和国のY soft。プリンター周りに、どんな課題が潜んでいるというのだろうか。Y softの創業者でありCEO兼会長のヴァツラフ・ムフナ氏に聞いた。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)など、企業のデジタル化を迫るテクノロジーの進化は止まらない。これら新たな分野への取り組みを進めることは重要だ。だが、企業のITインフラは、既存環境を含めた最適化を検討し続ける必要がある。デスクトップ環境の見直しやモバイル対応なども無視はできない環境だ。
一方で、かつてほど話題に上らない機器の1つにプリンターがある。オフィスに設置するプリンターの主力が、FAXやスキャナーの機能をも持つMFP(Multi Function Printer)になって以降、文書のデジタル化がさらに進み、紙を印刷する頻度は明らかに減少している。加えて、社員証を兼ねたICカードなどを使って、個人ごとの使用状況を把握したり出力した紙の取り忘れを防ぎセキュリティを強化したりすることも珍しくなくなっている。
そうした中、プリンター大手の米Xeroxが先頃、プリントマネジメントの新サービス投入に当たり、パートナー企業が開発するソフトウェアを採用した。ソフトウェア開発会社Y Softの開発によるものだ。Y Softはチェコ共和国で2000年に創業した非上場企業。日本市場では無名に近いが、世界に1万4000社以上の顧客を持ち、売上高は2800万ドル(30億円弱)という。大手メーカーがなぜYSoftに頼るのだろうか。
−−Ysoftの主力製品は。
プリントマネジメント用ソフトウェアの「Safe Q」だ。誰が、いつ、どのプリンターで何を印刷したかを一元管理する。最新のVer6からモジュールアーキテクチャーに変更し、必要なモジュールだけを導入できるようにした。
SafeQが目指すのは、ペーパーワークの時間を減らすことによるオフィスでの生産性および創造性の向上である。例えば生産性の向上に寄与する機能の1つに、プリントローミングがある。プリンタードライバーを切り替えることなく、同一システム上にある、どのプリンターから印刷できるようにする。作業場所を問わず最寄りのプリンターで印刷できるので、プリンターを探しがたり印刷した紙を遠くまで取りにいったりすることがなくなる。
もちろん、コスト削減やセキュリティの強化などの効果も期待できる。印刷してもピックアップしなかったり、不必要なカラー印刷や片面印刷を防いだりできるからだ。前者では紙代だけ3〜6%、後者では10〜30%のコスト削減効果がある。ICカードを使った認証により印刷した紙の取り忘れによる重要情報の漏えいが防げるし、誰が、いつ、何を印刷したかが分かれば監査のための情報にもなる。
−−上記のような効果は古くから指摘されており、多くの企業が既に取り組んでいる。プリンターメーカー各社も、ICカード認証や印刷ログ収集の機能は用意している。
承知している。ただし、プリンターメーカー各社が提供している機能の中には、当社製品によって実現されているものが少なくない。先に米Xeroxが当社とのパートナーシップ強化を発表しているが、他にも米HPや韓国のSamsung、日本のコニカミノルタやリコー、シャープなどとも当社はテクノロジーパートナーの関係にある。なぜ大手各社が当社に頼るのかを不思議に思っているのだろうが、その答えは、企業の利用環境におけるマルチベンダー対応が不可欠になっていることにある。
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