[市場動向]

IoTで製品志向からサービス志向へ、”デジタルツイン”と”サービタイゼーション”を目指せ(後編)

2016年11月9日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

先行きが見通せない今日において、「デジタルツイン」と「サービタイゼーション(サービス化)」が鍵になるという認識を示すウェーデンのERPベンダー、IFS。「IFS World Conference2016」では、両者を実現するためのIoTの位置付けと、それを実現するための新製品「IFS IoT Business Connector(IoT BC)」や「IFS Enterprise Operation Intelligence(EOI)」を中心に説明した。今回は、デジタルツインとサービタイゼーションを推進するIFSの取り組みを中心に紹介する。

 「ユーザー企業がアップデートに要する時間は平均22時間。しかしIFS9に移行した米国のプラスチック容器メーカーCDFは12時間で完了した。スウェーデンの軍用機・電子機器メーカーのSAABは、以前のバージョンを使っていたときは242のカスタマイズと48のシステム連携があった。IFS9にした結果、それぞれ106、44に減少した。その結果、以前なら2回のアップデートに9万ドルかかる費用が1万7000ドルと、80%も減らすことに成功した」。

 こうも語る。「グローバル企業のサポートはIFSのコアだ。しかし各国の様々な規制や法制度は目まぐるしく変わる。そこでIFS9では、それらを1つの拡張機能にまとめた。これだけをアップデートすれば済むようになるので、グローバル企業にとっては、よりエバーグリーンになる」。2017年早々に、この機能をリリースする計画である。

 ほかにもIFSは「IFS Managed Cloud on Microsoft Azure」という名称でIFS9をサービスとして提供している。「新規ユーザー企業の34%がこのサービスを契約している」(Matthews氏)という。だからといって旧来バージョンに問題を感じていない企業がIFS9に移行するかとなると話は別。IFSとしては地道にIFS9の利点を訴求するしかないだろう。

非公開化の理由、スウェーデン巨大財閥傘下のファンドが投資

 一方、今回のカンファレンスではCEOであるAlastair Sorbie氏が、IFSという企業の“再創造(Reinvent)”に言及した。株式公開会社だった同社は2015年11月、投資ファンドEQTの傘下に入り、非公開化している。その意図を説明したものだ。少々、長いが同氏のコメントを引用する。

 「IFSは創業以来、顧客の事業所のそばにテントを設置するような企業である。顧客密着のためだ。それは企業文化になり、60カ国で事業展開するようになった。今もそれは変わらない。一方で利益に十分にフォーカスをしてこなかったため、世界経済が低迷したとき、事業を統制する方向に変革を余儀なくされた。同時に買収を通じて成長を計り、(米ガートナーのマジック・クアドラントで)リーダーポジションを得た」。

 「しかし、それは短距離ランナーのウサイン・ボルトが100mをタイトスカートで走るようなもので、多くの制約があった。以前は4半期ごとに成長を求められ、キャッシュがあれば自社株の買い戻しを迫られた。そこに登場し、より早い成長への扉を開いてくれたのがEQTだ。彼らはIFSの経営陣にビジネス向上のタスクをセットし、必要な投資を約束してくれた。例えばフィールドサービスマネジメントの強化における2社の買収である。顧客は製品を作る以上にメンテナンスの方が利益を上げられるから、この領域は重要である。モビリティ、グローバル化への投資も大きい」。

 「EQTは、IFSがスウェーデン産業界における”隠れた宝”であることを指摘した。隠れたままではよくない。認知度を高めるために活動を開始している。その一つがF1チームのSauberのプリンシパルスポンサーになったことだ」。つまり非公開化により必要な分野に大胆に投資し、同時にIFSの弱点であるブランド認知度の低さを改善する投資もできるようになったというのだ。

 実際、WoCo2016ではSauber F1チームのAxel Kruse氏(Operations Director)が登壇(写真1)。「Sauberのように小さなチームがF1で戦うにはクレバーでなくてはならない。燃料タンクの設計だけでも10kgの重さがあるから、シミュレーションとテストを繰り返して最適解を求める必要がある。だから我々はデータを生成し分析するテクノロジーカンパニーである」などと語った。日本では地上波の放送がなくなったF1だが、欧州をはじめ世界的な人気は高く、認知度向上には最適かも知れない。

写真1:IFSがスポンサーになったSauber F1チームが登壇。会場を沸かせた写真1:IFSがスポンサーになったSauber F1チームが登壇。会場を沸かせた
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 しかし、そもそもEQTとはどういう企業なのか、経営陣から見て自由度を奪われる問題はなかったのか。これらについてSorbie氏に直接、聞いた。「(質問の意図は)一般に投資ファンドには良い印象がないがどうか、という意味だと思うが、EQTはいわゆる投資ファンドとは違う。ウォーレンバーグというスウェーデンの巨大財閥が有するファンドであり、何十億ドルもの資金を持つ。我々の意図をよく理解してくれており、EQTの投資先にはIFSの顧客になりそうな企業も少なくない」という回答だった。

 調べるとウォーレンバーグ財閥(ファミリー)は、「スウェーデンのGNPの3分の1を間接的に支配している」(wikipediaより)とまで言われるほどの名門。ABB、エリクソン、エレクトロラックス、アストラゼネカといった世界的大企業の主要株主でもある。となればその傘下入りはIFSにとって明らかにプラスだろう。

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