[市場動向]

ビッグデータを活用して観光客を呼び込む! くまもとDMCがデータビークルと協業

2017年2月7日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

国内初となる、地方銀行と自治体が出資する日本版DMOのくまもとDMCが、データサイエンスを活用した地域振興への取り組みを開始した。2017年2月7日の発表会では、日本マイクロソフトのMicrosoft Azureをプラットフォームに、データサイエンス製品を提供するデータビークルとビッグデータホルダー4社の協力で取り組みを進めることを明らかにしている。

 DMOは、Destination Management Organizationの略で、ここでは「目的地型観光振興会社」と訳されている。観光庁のホームページによると、「多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」が日本版のDMOだそうだ。

 DMOとDMCがまぎらわしいが、くまもとDMCの「DMC」はDestination Management Companyの略。DMOと同じような意味合いで使われている3文字略語だ。

 従来の観光協会が、社団法人や役所の一部だったため活動には制約があり、「来たい」と考えている人への「守り」のサービスだったのに対し、DMOは民間企業や役所など様々な関係者が参加して組織されており、「来てもらう」ための「攻め」のサービスを行うのが特徴といえる。

くまもとDMCの村田信一社長と応援に駆け付けたくまモン

 すでに全国で123の組織が、観光庁に「日本版DMO候補法人」として登録しているが、くまもとDMCの村田信一社長によると、「地銀と自治体が出資する日本版DMOは本邦初」だという。具体的には、熊本県と肥後銀行に加え、「熊本未来創生投資事業有限責任組合」というファンドが株主となっている。

 くまもとDMCでは、数あるDMOと一線を画すために、「データサイエンスを活用した観光振興」を目指すことにした。データサイエンスとは、要はビッグデータのことで、ビッグデータを分析して観光客の増加と、ニーズに合った観光商品の開発を目指す。

 ビッグデータを一般企業が活用するためには、通常外部コンサルタントやプログラム開発が必要となるが、それらを回避するためにデータビークルに協力を求めた。データビークルは、専門のデータサイエンティストの助けを借りずにデータ分析を行うツールを開発・提供している。

 今回くまもとDMCは、データビークルの「Data Ferry」と「Data Driver」を採用することにした。Data Ferryは、分析に必要となる様々なデータの収集とクレンジングを行うソフト。Data Driverは、独自の分析メソッドを取り入れ、自分たちで分析を繰り返し行うことのできるソフトで、いずれも専門性の高いプログラミングを必要とせず、一般の従業員も講習を受けることで分析可能になる。

 分析用のビッグデータを収集するために、4社のビッグデータホルダーからデータ提供を受けることにした。

 ナビタイムジャパンからは目的地検索データ・インバウンドGPSデータ、ソフトバンクの子会社であるAgoopからはスマートフォンGPSデータの提供を受け、集客アップにつなげたい考えだ。カスタマー・コミュニケーションズからは消費者のID情報を持ったPOSデータであるID-POSデータ、業界専用データベースを開発するeBaseからは商品詳細データベースの提供を受け、新商品開発に活用する。

 くまもとDMCは、Microsoft Azure上にデータベースほかのシステムを構築、データの分析結果を意思決定につなげるサイクルを、1サイクル1カ月未満の早いペースで回していく。これを最新の顧客ニーズに対応したサービスメニュー作りにつなげていきたい考えだ。

 2016年の熊本震災で離れていった観光客を呼び戻し、まずは震災前の観光客数に到達するのが目標だ。村田社長は「特に震災で、増設予定だった飛行機の直行便がなくなるなど、海外からの観光客離れのダメージが大きかった」という。このインバウンド需要の掘り起こしが、当面の重要課題となりそうだ。

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