セゾン情報システムズは、ファイル転送ソフトウェア製品「HULFT」が2016年に世界売上シェアで2位になったと発表した。どんなジャンルにせよ日本のビジネス向けソフトウェア製品が世界市場で2位になるのは、おそらく史上初。言語や文化、ビジネス慣習などの壁があるアプリケーション・パッケージはもちろん、機能や性能重視、信頼性が重視されるミドルウェア製品でも同じである。
2位と認定したのは有力調査会社である米Gartner。同社がまとめた調査「Market Share: All Software Markets, Worldwide, 2016」における「Managed File Transfer Suites」(MFT、ファイル転送)というジャンルである。ただし調査結果は有料で提供されており、一般には公開されていない。そのため図はセゾン情報システムズがガートナーの許可を得て公開しているものである。
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上記の図でA社、B社などとなっているのは、順にIBM、セゾン情報システムズ、Axway、Ipswitch、Globalscape、Cleoの各社(企業名は本誌推定)。シェア25.6%とダントツのトップは、AsperaシリーズのほかWebSphere MQ File Transfer Editionなど複数製品を持つIBM。2位の「HULFT」は6.9%に過ぎず、その差は大きい。3位のAxwayとの差も0.3%でしかない。だが2位であることに違いはない。
日本でのシェアや知名度は高いとはいえ、なぜ、そうなったのか。同社は「地道な努力を続けてきたことが結果につながった」(堀野史郎HULFT事業部マーケティング部長)と話す。中国・上海、シンガポール、米カリフォルニア州に事業拠点を設置。製品の多言語対応や日・英・中の3カ国語によるサポート、海外の販売チャネルやパートナーの開拓といったことを行ってきたという。
一方、「日本で磨かれたHULFTは品質の高さが特徴。MFTのような高信頼を要求されるソフトウェア製品でバグがないのは大きな競争力になっている」(同社のCTO、小野和俊氏)という面もあるようだ。だとすれば品質という強みを生かして海外対応を進めていけば、他の製品にもチャンスはあることを示している。
なぜこの話を取り上げたかというと、日本のソフトウェア製品が海外で存在感を増すのは一般企業にもメリットがあるからだ。というのも海外拠点のシステムを構築する際に、現地で知名度もシェアもない国産製品を利用することには、ある種の困難を伴う。これに対しシェアが高い=認知度もあるとなれば、グローバルを同じ製品で統一しやすくなる。自国IT製品の強さという欧米企業が享受している利点は、それほど明確には見えないが意外に大きいとも言われる。SaaSのようなサービスも含め、HULFTの後に続くソフトウェア製品を期待したい。