[調査・レポート]

コールセンターへの適用が進むIBM Watson

ソフトバンク、JR東日本、SMBCが語るその利点

2017年5月2日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

2017年、最も注目すべきテクノロジーとは何か?答がAI(人工知能)であることは論を要しないだろう。そんなAIのトップベンダーランナーがIBMの「Watson」であることもまた同じだ。ではWatsonの利用はどこまで進んでいるのか?日本IBMが4月末に開催したWatson Summit2017」の基調講演から報告しよう。

働き方改革にAIを活用

 基調講演に登壇したユーザー企業は3社。ソフトバンク、JR東日本、三井住友銀行である。トップに登壇したソフトバンクの宮内謙社長はこう切り出した。「今年から社員に呼び掛けているのはSmart&Fun。つまり、もっと楽しく働こうということだ。どうやるのかというとIT、特にAIを活用して、業務時間を短縮したり仕事の流れをスムーズ化する。言わばソフトバンク流の働き方改革である」。

 具体例として説明したのが、コールセンターの窓口業務。同社では6000席のオペレーターが1件あたり平均10分かかる問い合わせ対応を日々こなしている。2016年からここにWatsonを適用した結果、2015年度比で対応時間を15%削減できるようになったという。回答候補の上位5件に正解が含まれる割合(回答精度)も、16年6月の78.3%から17年3月には94.3%に向上した(図1)。

図1:ソフトウバンクのコールセンターにおけるWatsonの効果
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 「過去9カ月で蓄積したデータは4万5500件。AI専任の学習チームがいて、応対時の情報をWatsonに覚え込ませている。今後、回答精度をさらに高め、対応時間を短縮するには時間がかかるが、まずは効果があることを実証できた。2、3年後には対応時間を15年度比で半減させ、チャットボットも組み合わせてコールセンターの席数を2000程度にしたい」。コールセンターだけではない。6月から直営ショップや量販店の売り場にも展開。新人の店舗スタッフを補完する計画だ。

 もう1つ、ネットワーク保守への適用例も説明した。「半年前、社内に『IoTやAIのアイデアを出せ、使いこなせ』と号令をかけた」という。その中から出てきたのが、24時間365日止められない仕事に携わるネットワークの保守部隊の案件だった。約2万あるネットワークノード(サーバー)を常時監視し、何かあると保守に出動する、緊張を強いられる仕事だ。

 そこでサーバーの膨大なログ(アラーム)を自動監視して分類し、順位付けする業務をWatsonでできるようにした。この結果「アラーム確認から対策手順の確定に要する時間を23分から2分半へと10分の1減らした」(図2)。追加動員件数も137件から60件に半減し、部署スタッフの満足度は83%になったという。

図2:ネットワークの保守業務にWatsonを適用
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 「iPhoneが登場して10年、世の中は大きく変わった。次の10年はAIだ。人とAIが共に働く社会はすでに始まっており、現場の痛みや苦労をなんとかするアイデアを出しさえすれば、AIで解決できる。皆がプログラマーや技術者になる必要はない。このやり方をソフトバンクの企業文化にしたい」(宮内氏)。

 JR東日本からは取締役副会長の小縣方樹氏が登壇。「我々がいる交通・運輸業界は今、100年に一度の波に晒されている(図3)。車の自動運転が現実になる時代、鉄道もイノベーションしなければならない。モビリティ・アズ・ア・サービス(移動のサービス化)を目指し、我々はSTTT(Shorter Total Trip Time)というキーメッセージを打ち出している」。

図3:JR東日本の小縣氏がいう100年に一度の変革の波
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 STTTは、鉄道の利用時間だけでなく、利用者から見たドアツードアの移動時間を短縮する考え方。鉄道、バス、タクシーや自家用車など、すべての交通機関を連携させて実現する。「バックボーンには情報やデータがあり、ITを活用した鉄道のデジタルトランスフォーメーションが鍵になる」(小縣氏)。

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