IDC Japanは2017年5月18日、オープンソースのクラウド基盤管理ソフトウェアの「OpenStack」とコンテナ管理ソフトウェアの「Docker」における国内企業での導入状況調査の結果を発表した。両ソフトウェアとも、計画/検討段階から具体的な実装段階に入った国内企業の増加が判明したが、回答からは現存の課題も明らかになっている。
IDC Japanは今回、サーバー仮想化を実施している企業および組織を対象に調査を実施し、464社から有効回答を得ている。
OpenStackの導入状況について、「本番環境で使用している」企業は10.6%で、2016年3月調査の7.0%から3.6ポイント上昇したという。「開発/テスト/検証段階」にある企業は14.4%に上り、前回調査の8.3%から6.1ポイントの大幅な上昇となっている。両回答を合わせると、全体の4分の1がOpenStackの実装を進めていることになる。また、「使用する計画/検討がある」と回答した企業の割合は前年より減少し、上記の結果と合わせて、計画/検討段階から具体的な実装段階に入った企業の増加ぶりがうかがえる。
IDCは、OpenStackを使用中ないしは計画/検討中の企業に対し、OpenStackを使用していくうえでの課題について尋ねている。その結果を見ると、「OpenStackに精通しているエンジニアが少ない」を25.0%の企業が挙げ、前回調査に引き続き最多の回答となった。この課題に、「半年ごとのメジャーリリースに追従できない」、「OpenStackの信頼性に不安が残る」が共に17.2%で続いている。一方、前回調査で28.6%と回答率が高かった「セキュリティの脆弱性に不安がある」は、2017年調査では13.8%にまで下がっている。
続いて、Dockerの導入状況については、「本番環境で使用している」とした企業は6.0%で、前回調査の3.7%からわずかな上昇にとどまった。一方で「開発/テスト/検証段階」の企業は13.1%(前回調査の5.2%から7.9ポイント上昇)に達し、OpenStackと同様、Dockerについても計画/検討段階から具体的な実装段階に入った企業が増加したことがうかがえる。また、Dockerを使用している企業の34.8%がDockerコンテナの管理に「Kubernetes」を使用していることも判明したという。
Dockerについても使用中ないしは計画/検討している企業に、Dockerを使用していくうえでの課題を尋ねたところ、「Dockerに精通しているエンジニアが少ない」が24.7%が最多回答となった。前回調査では19.5%であり、IDCは「Dockerの需要増加に対してエンジニアの供給が追いついていない状況がうかがえる」と分析している。以降は、「セットアップや運用管理のためのドキュメントや公開情報が少ない」(18.0%)、「Dockerコンテナ環境の運用管理が難しい」(16.9%)の回答が続いている。
同調査を担当したIDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は結果を受けて次のように分析している。
「これまでOpenStackとDockerに対する注目度は非常に高かったが、実際にはサービス事業者をはじめとする一部の先進企業の導入にとどまっていた。しかし今回の調査結果からもわかるように、2017年は2016年までの傾向とは明らかに異なっており、OpenStack、Dockerともに具体的な実装段階に入っていく企業が増えていくと見られる。2017年はOpenStackとDockerにとって普及元年になる可能性が高い。一方で、エンジニア不足の課題が露呈する一年にもなるであろう。国内IT業界を挙げてエンジニアの育成を早急に行っていくべきである」
同調査は、IDCが発行したレポート「2017年 国内システムインフラストラクチャ市場 ユーザー動向調査」(JPJ41775717)で詳細が報告されている。