経済産業省と東京証券取引所は2017年5月31日、「攻めのIT経営銘柄 2017」を発表した。東証に上場している企業の中から、企業価値向上を視野に果敢なIT活用を進めている企業を範として選出。日本企業に広く刺激を与え、企業改革を促すことを目的の一つに据えている。今回は、31社が名を連ねた。
経営とITはもはや不可分。テクノロジー活用をテコに、弛まぬ経営革新を続けることは熾烈な市場競争を勝ち進むための条件だ。先駆的な取り組みで実績を上げている企業を周知すれば、他の企業に猛追を促したり投資家からの評価を高めたりすることにつながる。そうした好循環を国内企業に広め、ひいては日本の国際競争力の底上げを図る──。そんな思いが込められた「攻めのIT経営銘柄」の選出は2015年に始まり、毎年更新することで徐々に認知度を上げてきた。
3回目を迎えた「2017」の銘柄には31社が選ばれた(表1)。東証(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)に上場する約3500社にアンケートを送付。回答のあった382社を対象に、所定のスコアリングや選考委員による評価などのプロセスを経て、最終決定に至った。
前回まであった「ROE(自己資本利益率)が8%以上、もしくは業種平均以上」というレギュレーションが「マイナスではないこと」に緩和されたほか、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットといった最新テクノロジーを改革に活かしていることを重視するなど、評価基準に多少の見直しがあった。アサヒグループホールディンス、東レ、ブリヂストン、JFEホールディングス、日産自動車、トッパン・フォームズ、東日本旅客鉄道、三井物産、東京センチュリーの9社は3年連続の選出となり、いわば“常連”となった格好だ。
| 表1:「攻めのIT経営銘柄 2017」に選出された企業の一覧 | |||
| 企業名 | 業種 | 2015 | 2016 |
| 清水建設株式会社 | 建設業 | ||
| 大和ハウス工業株式会社 | 建設業 | ● | |
| アサヒグループホールディングス株式会社 | 食料品 | ● | ● |
| 東レ株式会社 | 繊維製品 | ● | ● |
| 住友化学株式会社 | 化学 | ||
| 富士フイルムホールディングス株式会社 | 化学 | ||
| 株式会社ブリヂストン | ゴム製品 | ● | ● |
| JFEホールディングス株式会社 | 鉄鋼 | ● | ● |
| 日立建機株式会社 | 機械 | ||
| 日本電気株式会社 | 電気機器 | ||
| 富士通株式会社 | 電気機器 | ||
| 日産自動車株式会社 | 輸送用機器 | ● | ● |
| トッパン・フォームズ株式会社 | その他製品 | ● | ● |
| 中国電力株式会社 | 電気・ガス業 | ||
| 東日本旅客鉄道株式会社 | 陸運業 | ● | ● |
| 日本郵船株式会社 | 海運業 | ● | |
| 日本航空株式会社 | 空運業 | ● | |
| ヤフー株式会社 | 情報・通信業 | ● | |
| 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 | 情報・通信業 | ||
| 株式会社IDOM | 卸売業 | ||
| 三井物産株式会社j | 卸売業 | ● | ● |
| Hamee株式会社 | 小売業 | ● | |
| 日本瓦斯株式会社 | 小売業 | ● | |
| 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ | 銀行業 | ||
| 株式会社みずほフィナンシャルグループ | 銀行業 | ● | |
| 野村ホールディングス株式会社 | 証券、商品先物取引業 | ||
| SOMPOホールディングス株式会社 | 保険業 | ||
| 東京センチュリー株式会社 | その他金融業 | ● | ● |
| 株式会社レオパレス21 | 不動産業 | ||
| 株式会社LIFULL | サービス業 | ||
| セコム株式会社 | サービス業 | ● | |
写真1:経済産業大臣政務官の井原巧氏同日、都内のカンファレンスホールで開催された発表会には、選出された企業の代表者が一堂に会した。
冒頭で挨拶の壇上に立ったのは、経済産業大臣政務官の井原巧氏(写真1)。「昨今のITの革新は従来にないスピードとインパクトで進んでいる。それを味方に付けるには、個別バラバラではなく、技術もデータも組織も人も巧みにつなげ、他に秀でた取り組みに挑むことが欠かせない。2017の銘柄に選出された企業は各業界のトップランナーであり、他社とのコラボレーションで新たな価値を創り出しているような事例もある。各社の挑戦がモデルケースとして波及し、我が国の競争力強化や持続的成長に結実することを願っている」と来場者に訴えた。
写真2:都内で開催された「攻めのIT経営銘柄 2017」発表会では、選出企業の代表者が壇上に上がった拡大画像表示
先の31社とは別に、一連の評価プロセスの中で総合評価が高かった企業、または注目されるべき取り組みを実践している企業の21社を「IT経営注目企業2017」として選出した(表2)。現行の評価基準に則ると「銘柄選定」とまではいかないものの、その取り組みは間違いなく他社の範となるという位置づけだ。
| 表2:「IT経営注目企業 2017」に選出された企業の一覧(2015/2016銘柄選出の有無) | |||
| 企業名 | 業種 | 2015 | 2016 |
| 株式会社大林組 | 建設業 | ||
| 積水ハウス株式会社 | 建設業 | ● | ● |
| 花王株式会社 | 化学 | ● | |
| 新日鐵住金株式会社 | 鉄鋼 | ● | |
| ダイキン工業株式会社 | 機械 | ||
| 株式会社IHI | 機械 | ● | |
| コニカミノルタ株式会社 | 電気機器 | ● | |
| 株式会社日立製作所 | 電気機器 | ● | ● |
| オムロン株式会社 | 電気機器 | ||
| 凸版印刷株式会社 | その他製品 | ||
| 大阪ガス株式会社 | 電気・ガス業 | ● | |
| ANAホールディングス株式会社 | 空運業 | ||
| 株式会社システム情報 | 情報・通信業 | ||
| 株式会社ラクス | 情報・通信業 | ||
| 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ | 情報・通信業 | ||
| 伊藤忠商事株式会社 | 卸売業 | ||
| 株式会社パルコ | 小売業 | ||
| 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ | 銀行業 | ||
| 株式会社大和証券グループ本社 | 証券、商品先物取引業 | ||
| 東京海上ホールディングス株式会社 | 保険業 | ● | |
| 株式会社パソナグループ | サービス業 | ||
なお、「攻めのIT経営銘柄2017」についての詳細なレポートが経済産業省のWebサイトと東証のWebサイトで公開されている。
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