マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP..。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャ、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を、「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で、分解していきたいと思います。今回取り上げるのは「デジタルツイン」です。
【用語】デジタルツイン サイバー空間の「双子」は一卵性
製造業を中心に注目を集めているのが、デジタルツイン。機器や工場設備などの物理空間に実在するモノを、サイバー空間のコンピューター上に再現した「双子」です。物理的な機器、部品等からIoT技術などを使って収集した計測データや、計測データに基づきはじき出された仮想計測データを解析し、シミュレーションすることにより物理空間のモノにより良い設計や環境、動作指示を与え、モノやモノの動作を改善します。インダストリー4.0に邁進するドイツでは”Cyber-physical systems (CPS)”と表現していますが、おおよそ同義と見てよさそうです。
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【イノベーション】サプライチェーンを変革
製造業の生産性向上が端緒とするデジタルツインですが、シーメンスが、Product(企画)、Production(製造)、Performance(使われ方)の3段階における変革を謳っているように、設計段階から運用・保守に至るまで、モノのライフサイクル全体を変革します。障害予測によってより耐久性に優れた設計が可能になり、運用・保守段階では従来の「12ヶ月ごとにメンテナンス」といった画一的な実施ではなく、個々の機器や設備の実態に応じたメンテナンスを実現します。例えば航空機であれば、中東の砂漠地帯と極寒の北米地帯では、同じ機種でもダメージの度合いや種類が異なります。個体の環境をシミュレーションしたうえでメンテナンスの時期や内容を精査することで、効率と顧客サービス品質の向上が可能です。
もちろん生産段階でも、機器の動作状況や温度などの外部環境、また電気代等の解析により、最適な製造サイクルのシミュレーションが期待できます。3Dプリンターの項でご紹介した通り、ものづくりの世界ではマスカスタマイゼーションが進行していますが、多品種少ロット製造の際にも、デジタルツインを活用した最適な設計や生産管理が可能になりそうです。
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