企業経営とITはもはや不可分の関係にある。ビジネスの俊敏性や弾力性をより一層高めていくには、よきパートナーを選び、既存のIT製品/サービスを適材適所で活用していく取り組みが欠かせない。実績に裏打ちされた技術力やノウハウを集積し“尖ったソリューション”を展開しているSIerの代表例を紹介する。
IoTやAI、クラウドといったICTの目覚ましい進化と普及の加速を背景に、多くの企業が新たな競争力を創るべく果敢なチャレンジを始めている。これまでなかった斬新な事業モデルを検討することももちろん大切だが、既存のIT基盤も含めて企業経営の俊敏性や弾力性をいかに究めていくかが何よりも重要な視点となる。
とにもかくにもスピードがものを言うこの時代。企業は、自社ですべてをまかなうという発想から離れ、社外の適正なパートナーとタッグを組み、すでにあるソリューションやサービスを巧く利活用する知恵もまた不可欠なものとなってきた。
こうした状況に呼応するかのように、「独自のソリューションやサービス」で存在感を示すSIerが増えている。これまでの実績を通じて蓄えた技術力やノウハウを法人向けのビジネスメニューに凝縮し展開を図っている企業だ。このほどIT Leadersは調査会社のMM総研と共に、そうしたプレーヤーにお声がけし注力領域や具体的ソリューションについて最新事情をヒアリングした。以下に、4社の概要を紹介する。
アルプス システム インテグレーション
スピード重視のIoTトライアルキットを筆頭に
“デジタル変革”の最前線に打って出る
アルプスシステムインテグレーション(ALSI)はアルプス電気のグループ会社。製造業・流通業を主な対象に業務システム開発やファームウェア開発を手掛けるほか、セキュリティソリューションの領域でもしっかりとした地歩を築いている。
特筆すべきは、Webフィルタリングソフト「InterSafe Webfilter」の導入実績。累計1500万端末以上、とりわけ教育現場では2万校を超える学校に採用されていることに加え、国内の携帯電話キャリアがいずれもInterSafe WebFilterまたはALSIの戦略子会社であるネットスター社のURLデータベースを採用していることからも実力の高さが伺える。この分野においては、国内で14年連続でシェアNo.1だ(2017年9月発表時点)。
新しい事業領域にも積極的に踏み出している。アルプス電気のセンサーネットワークモジュールを活用したIoTソリューション「IoT FastKit」の提供を2017年7月28日から開始したのはその典型例だ。これは、様々なデータを取得するセンサーやIoT Gateway、主要なユースケースを想定した管理画面機能などをセットにして提供するもの。クラウドがベースとなっているため、ユーザーは環境構築作業に手を煩わせることなく、本来の目的であるデータ収集と分析作業に集中できる。
ユースケースとしては目下のところ、「動体モニタリング」「熱中症予防アラート」「ファシリティ利用状況」「倉庫・オフィス環境快適度」の4つを掲げ、それぞれですぐに使い始められるように機能やパラメータなどのプリセットを済ませている。スピード重視でPoC(実証実験)を始めるのに最適であることから市場の注目度は高く、今年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2017の出展ブースでも、大きな反響を呼んだ。
●詳細は同社Webサイトへ
http://www.alsi.co.jp/
シーエスイー
マルチインタフェースM2Mルーターなど
独自の強みを活かして業務改革を支援
シーエスイーは、愛知県に本社を構える独立系のSIerだ。本社ではメイン業務であるコンピュータのキッティング、ネットワークの構築、電気通信設備工事などを手掛けている一方、東京支社ではICカードリーダーやM2Mルーターといった業務用端末領域にフォーカスした企画・製造や、Wi-Fiソリューションといった特徴ある事業で顧客と緊密な関係を築いている。
業務用端末機器「Pit-21シリーズ」の最新モデルである「Pit-21A」というモバイル型ICカードリーダーを2017年より販売開始。さらに、モバイルタイプのコンセプトを継承しつつ、多様なICカード利用シーンに対応するため、壁掛け固定用のクレードルを開発中で10月末には販売をスタートする。Pit-21Aは、大学や専門学校での出席管理端末や学習塾の登下校メール配信システムとしてすでに全国で多数の導入実績があるほか、2017年6月には北翔大学との産学連携協定を締結するなど、教育機関への導入を加速させている。
また同社は、遠隔監視及び制御が必要な機器との接続により、無人環境での安定運用を実現するマルチインタフェースM2Mルーターである「BLACK Pitシリーズ」も提供している。同シリーズは、自動販売機の在庫・釣り銭情報などを管理するシステムや、コンプレッサーや発電機などの産業機器の稼働状況を遠隔からリアルタイムで監視する装置に組み込み、本社及びデータセンタと通信する上でのキーデバイスとして活用されている。産業機器早期警報装置システム、ビルやテナントのエネルギー使用量の可視化などに用途を拡げている。
その他、外国人観光客向けの無料公衆無線LAN環境構築も手掛けており、東京都内の銀座1丁目から8丁目までの中央通り沿いで運用している「G Free(銀座フリーWi-Fi)」の導入支援などはその代表例である。今後は、さらにユーザーの声に耳を傾けて的確な製品ラインナップの充実を図るなど、顧客数の拡大を図る構えだ。
●詳細は同社Webサイトへ
https://www.cseinfo.co.jp/
東和エンジニアリング
映像や音響への深い造詣を軸に
ビジネス現場を高度化するソリューションを展開
東和エンジニアリングは、映像・音響・情報通信システムに長年強みがあり自社ブランド「TOWAROW(トゥワロー)」によるオリジナルソリューションを展開している。
学校・教育分野では、アクティブ・ラーニング向けソリューションやスマートフォンへの情報配信ツール「Cleva!(クレバ)」などによる学習環境を提供。企業向けでは、遠隔会議やBCP対策におけるテレビ会議の運用をサポートするテレビ会議コントロールシステム「Video Conference Manager」などによるコミュニケーション環境の構築。庁舎・公共施設向けの「議場システム」については、1976年以来、累計660件の自治体へ納入しており、37%と高いシェア誇っている。
さらに、システム納入後のサポート面では、定期訪問・常駐運用支援などの従来型のサポートに加え、遠隔サポートサービス「リモートコンシェル」の提供を開始し、人的コストの削減やリアルタイムな課題解決により、効率的な運用支援の提供が実現できる様になっている。
東和エンジニアリングでは、TOWAROWソリューションを中心とした様々なシステムとの連携により、お客様のトータルな課題解決をサポートしている。将来的にはTOWAROWソリューションにおけるクラウドの利用も検討しており、今後は顧客ニーズを見ながら対応していきたい、としている。
●詳細は同社Webサイトへ
http://www.towaeng.co.jp/
ハイマックス
システム基盤の構築~運用に関わる技術と知見を
「サービスメニュー」に再整理して提供へ
独立系SIerのハイマックスは、約40年にわたり銀行、証券、保険、クレジット、公共、流通の6業種のアプリケーション開発及びシステム基盤構築を中心に展開してきた。同社は現在、これまで蓄積してきたノウハウを活かし、SDx/OSSを軸にトレンド技術領域にフォーカスした「システム基盤サービスメニュー」を新たに強化していく方針を打ち出している。
「システム基盤サービスメニュー」は5つのメニューで構成する。
- 業務を自動化、効率化し、働き方改革につなげるRPA(Robotic Process Automation)を仮想デスクトップ環境で提供する「RPA on DaaS」
- OSSなどを活用して顧客をベンダーロックインから解放し、システムの構築、移行、運用を適正価格で支援する「プロフェショナルサービス」
- インフラ構築やテスト実行において、期間短縮やコスト改善を図る「インフラ自動構築サービス」
- NFVやSDNを導入してネットワーク環境を刷新、コスト削減を実現する「新世代ネットワーク導入」
- 現状のシステム運用状態が適正かどうか診断し、システム運用全体のアウトソーシングも実現する「運用診断/運用設計/システム運用」
特に、上記1.~3.に関しては優先的に取り組んでおり、2018年4月には本格リリースを予定している。
今まで培ってきたシステム基盤の設計、構築、運用に関わる技術・ノウハウをサービス単位に再整理しメニュー化したことで、他にはない強みを発揮しプライム案件や顧客数の拡大を図ろうと考えている。
●詳細は同社Webサイトへ
https://www.himacs.jp/