日本IBMは2017年10月25日、同社が開発中の量子コンピュータシステム「IBM Q」の現状と展望を説明した。すでにクラウドサービス型で提供しており、ソフトウェアを開発するためのAPIやSDKも提供済み。数年後には、古典的なコンピュータでは解決できなかった問題を実際に解決し始めるようになるという。
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米IBMのIBM Qは、量子ゲート型の量子コンピュータである。半導体による論理回路の代わりに量子ゲートを用いる。古典的なコンピュータが0か1の2値しか表せないビットを使って計算するのに対して、量子コンピュータは0と1を重ね合わせた量子ビットを使って計算する。これにより並列処理を高速化する。
2016年5月に、量子コンピュータを無料で使えるクラウドサービス「Quantum Experience」を公開。2017年3月には、量子コンピュータの商用ブランドとして「IBM Q」を確立した。アプリケーションからクラウドサービスを利用するためのAPIやSDK(ソフトウェア開発キット)も提供している。クラウドサービスはこれまで、5万4000人以上のユーザーが100万回以上の実験に利用してきた。
無料のクラウドサービスは、サービス開始当初は5個の量子ビットを使っていたが、現在では16個の量子ビットへと性能を向上させている。ここまでを米IBMでは第1世代の量子コンピュータと位置づけている。まもなく、17個の量子ビットを備えた第2世代の最初の量子コンピュータを商用製品としてリリースするという。
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数年後、2020年頃か、その少し先に、米IBMが量子アドバンテージと呼ぶ、量子コンピュータの活用段階の新しいフェーズに入るという。量子アドバンテージのフェーズでは、研究用途ではなく、現実の問題で、これまでの古典的なコンピュータでは解決できなかった問題を実際に量子コンピュータが解決し始める。
量子アドバンテージのフェーズへと向かうことを妨げている課題、つまり、量子コンピュータの性能を現在よりも高めるためのブレイクスルーは、量子ビットの数を増やすことと、磁気ノイズの影響などによるエラー率を下げることである。素材の改善などによってエラーを抑え、量子の重ね合わせ状態が持続するコヒーレント時間を長くするとしている。
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