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米IBM、量子コンピュータの商用版「IBM Q System One」を発表
2019年1月9日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)
米IBMは2019年1月8日(米国現地時間)、米ラスベガスで開催中のCES 2019で、企業・組織に向けて提供する商用量子コンピューティングシステム「IBM Q System One」の完成を発表した。併せて、2019年に米ニューヨークのポキプシーに顧客向けの「IBM Q Quantum Computation Center(IBM Q量子計算センター)」を開設する計画を発表した。
米IBMは以前より、従来のコンピューティングアーキテクチャでは困難な処理を可能にする試みとして、IBM Q Systemの開発に取り組んできた。2016年5月には、「The IBM Q Experience」クラウドサービスとして試験的な利用をできるようにしている(関連記事:日本IBMが量子コンピュータ「IBM Q」の進展を説明、数年後には現実の問題を解決)。
「量子コンピューティング(Quantum Computing)の応用への取り組みは、財務データをモデル化する新しい方法を見つけ、よりよい投資をするために重要なグローバルリスクファクタを隔離すること、または超効率的ロジスティクスのためのグローバルシステムを横断する最適経路を見いだすことを含む」(IBM)
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IBMはQ System One(写真1)を「世界初の統合量子コンピューティングシステム」と謳う。同社によると、従来のコンピュータシステムが複数のコンポーネントを組み合わせて連携して動作するのと同様のアプローチを、量子コンピュータであるIBM Q System Oneの設計に適用したという。「IBM Q System Oneが、世界で初めて実験室の枠を越えて、ビジネス用途で動作させることのできる量子コンピュータである」(同社)
IBM Q System Oneでは、最新のクラウドベース量子コンピューティングプログラムとして機能するために、多くのカスタムコンポーネントで構成されている。技術的なハイライトとして、IBMは以下の項目を挙げている。
●再現性があり予測可能な高品質キュビットを得るために、安定性を保ち自動調整されるよう設計された量子ハードウェア
●継続的な低温および孤立した量子環境を提供するための極低温工学
●多数のキュビットを厳密に制御するためのコンパクトな形状をした高精度電子機器
●システムの健全性を管理し、ユーザーのダウンタイムなしにシステムのアップグレードを可能にする量子ファームウェア
●セキュアなクラウドアクセスと量子アルゴリズムのハイブリッド実行を提供するための古典的な計算手法の併用
●次ページ:量子コンピュータの商用化を可能にした設計手法の解説
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