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VMware Cloud on AWSの国内提供は2018年Q4に─NRIとリコーがベータプログラム運用中
2017年11月1日(水)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
ヴイエムウェアとアマゾン ウェブ サービス ジャパンは2017年10月31日、「VMware Cloud on AWS」の日本での提供開始時期を2018年第4四半期とすることを発表した。都内で開催された「vFORUM 2017」における注目トピックを紹介する。
ヴイエムウェアとアマゾン ウェブ サービス ジャパンは2017年10月31日、都内で開催中(10/31 - 11/1)のヴイエムウェアの年次カンファレンス「vFORUM 2017」のキーノートにおいて、2017年8月から米国でサービスを開始している「VMware Cloud on AWS」(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/14918)の日本での提供開始時期を2018年第4四半期(10月 - 12月)とすることを発表した。
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それぞれの日本法人の代表であるジョン・ロバートソン氏(ヴイエムウェア 代表取締役社長)と長崎忠雄氏(AWSジャパン 代表取締役社長)が揃って日本でのローンチを発表した姿は、2016年に米国のカンファレンスで何度か見かけたパット・ゲルシンガーCEO(VMware)とアンディ・ジャシーCEO(AWS)の組み合わせを彷彿とさせる。あと1年に迫った国内でのサービスローンチに備え、両社はアーリーアダプタの顧客によるベータプログラム適用を拡充し、「より多くの日本の顧客に満足してもらえる状態でGA(一般提供開始)を迎えたい」(ゲルシンガーCEO)としている。
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VMware Cloud on AWSはVMwareが同社の顧客向けに提供するハイブリッドクラウドサービスだ。VMwareユーザーは自社のvSphereベースのプライベートクラウド環境を、そのままAWSの潤沢なリソース上で展開することが可能になる。AWSのベアメタルリソースをインフラとして利用できるベンダーは現在、AWS以外にVMwareただ1社だ。それだけに両社の提携は、最初にアナウンス(https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1024873.html)された2016年10月以来、常にその動向が注目されてきたが、今年8月の「VMworld 2017」でようやく“Initial Availability”という一部のユーザーのみを対象にした限定プログラムとして米国オレゴンリージョン(米国西部)から提供が開始された(https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1078491.html)。
オレゴン以外のリージョンからの一般提供に関しては、これまで両社ともに「2018年中」という回答だったが、今回はじめて両社の国内トップにより「日本は2018年第4四半期」という明確な時期がコミットされたことになる。現在、VMwareとAWSは「早期ベータプログラム」として約50社の顧客を対象にVMware Cloud on AWSを提供しているが、日本からはAWSのプラチナムパートナーとしても知られる野村総合研究所(NRI)と、大規模なVMwareベースのプライベートクラウド基盤を抱えるリコーが参加している。
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vFORUM 2017に登壇したNRI 執行役員 基盤サービス本部 本部長 安齋豪格氏と、リコー デジタル推進本部 情報インフラ統括部 部長 若杉直樹氏はともに「1つのvCenterでVMwareとAWSの両方の環境をコントロールできることが運用において非常に大きな魅力」と語っており、一般提供開始までの要望として「(VMware上の)既存のアプリケーションがまだAWSではうまく動かないものがあるのでGAまでには改善してほしい。また現在はオレゴンリージョンだが、できるだけ早く東京リージョンで使えるようになりたい」(若杉氏)、「金融関係など、どうしてもパブリッククラウド上に資産を移せない顧客がVMware Cloud on AWSに大きく期待している。個々の機能の改善はもちろんのこと、(2018年に開設予定の)大阪リージョンでも利用可能になることを望む」(安齋氏)とそれぞれ語っている。
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9月のInitial Availabilityの段階では、Direct Connect(AWS)やvMotion(VMware)といったエンタープライズのクラウド利用では必須ともいえる重要な機能が使えない状態で、vSANやNSXというVMwarewクラウドを構成する上で欠かせないパーツも満足に利用できなかった。この点に関して、国内報道関係者とのラウンドテーブルに臨んだゲルシンガーCEOは「日本のユーザーに提供するまでには、少なくともvSANおよびNSXはフル機能で使えるようにする。その他の機能に関しても、可能な限り多くの顧客に満足してもらえる状態にまで高めていくよう、日本法人(ヴイエムウェア)のメンバーには指示している」と明言している。
また、VMwareでVMware Cloud on AWSを担当するプロダクトマネジメント シニアマネージャのナラヤン・バラドワジ氏は「Direct Connectの実装は顧客の間でも最もプライオリティの高い要望であり、我々としても最優先で取り組んでいく」と別のラウンドテーブルでコメントしている。そのほかにもコンソール上から5分以内にテクニカルサポートと接続できるチャットサポートや、マルチAZ/マルチリージョン(現在はシングルリージョンのみ)への対応などもGAまでに追加していく予定だという。
「2018年Q4のローンチまでに、日本のユーザーを含むできるだけ多くの顧客からフィードバックを得たい。AWSとのパートナーシップは我々に“ゲームチェンジ” - まったく異なるビジネスシーンをもたらした」とゲルシンガー氏は重ねてコメントしている。そしてその強烈なインパクトは両社の顧客のもとへ、よりパワーアップした形で1年後に届けられることになるはずだ。