工場設備やITシステムなどの事業を展開するシュナイダーエレクトリックは2018年2月13日、説明会を開き、システムの自前主義やエンジニアの高齢化といった現在の日本企業が抱えている課題を、デジタル技術によって解決すると語った。例えば、監視データに応じて空調を自動で制御することで、電力の効率化が図れる。
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「高齢化による技術の伝承が行われていないなど、日本の企業に特有の課題を、デジタル変革によって解決する」。シュナイダーエレクトリック日本統括代表の白幡晶彦氏は、デジタル技術を活用した自動化によって、ユーザー企業が抱える課題を解決できると説明する。
白幡氏は、日本企業の工場設備やITシステムの課題を3つ指摘する。(1)エンジニアが高齢化する一方で技術の伝承が進んでいないこと、(2)自前主義で個別最適が図られているが全体最適にはなっておらず、システム全体の統合管理が実現できていないこと、(3)グローバル標準への対応が遅れていることである。
例えば、アンケートによると、技術の伝承に着手していないユーザーと、技術の伝承がうまくいっていないユーザーを合わせると、全体の85%を占める。技術の伝承がうまくいっているユーザーは、わずか15%だけである。
技術の伝承に着手していないユーザーに理由を聞いたところ、「経験でしか伝承できない」という回答と「ベテランの定年延長や再雇用で対応」という回答が1位と2位を占めた。職人の世界になってしまっている。ここに「デジタル技術によって自動化を図る需要がある」と白幡氏は指摘する。
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ファシリティの制御を自動化して電力効率などを向上
同社は、顧客の事業をデジタル化して効率性を改善するというミッションを掲げている。「20年後に、電力需要は1.5倍に増える。一方でCO2排出量は2分の1にしなければならない。つまり、電力効率を3倍に高める必要がある。これを可能にするのがデジタル変革」(白幡氏)である。
電気を作るコストと電気を貯蔵するコストが下がってきたことから、発電設備を分散できるようになってきたという。この状況を、デジタル変革を組み合わせることで、電力効率を飛躍的に上げるとしている。
デジタル変革によって効率化を果たしたユーザー事例の1つが、データセンター事業者のアット東京である。シュナイダーエレクトリックの空調機を27台導入し、IT負荷に応じてリアルタイムに空調ファンを制御している。これにより、空調にかかる電力を削減した。
カリモク家具も、デジタル変革によって成果を上げたユーザーの例である。AR(拡張現実)技術を用いて生産現場での保守作業を効率化した。タブレットのカメラで設備を映すと、設備やARマーカーを認識し、操作マニュアルなどを閲覧できる。これにより、工場の停止時間が半減したほか、保守部品を削減できた。
デジタル変革を実現する道具立てとしてシュナイダーエレクトリックは、(a)ネットワークにつながる機器群、(b)現地にあって機器群を直接制御可能なエッジコンピューティング基盤、(c)複数拠点のデータを比較したり複数拠点で知識を共有したりできるクラウドコンピューティング基盤の3階層のすべてをカバーするとしている。