[イベントレポート]
インフォマティカ、「DXの実現にデータ統合は不可欠」としてポートフォリオを強化
2018年5月28日(月)末岡 洋子(ITジャーナリスト)
創業25周年を迎えたデータマネジメント製品ベンダーの米インフォマティカ(Informatica)。同社の最新戦略が、今年で第19回目となる年次イベント「Informatica World 2018」(米国現地時間2018年5月21日~24日、米ネバダ州ラスベガス)で語られた。テーマは「Disrupt. Intelligently(インテリジェントに破壊せよ)」。初日の基調講演では、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援の方向で強化された「Intelligent Data Platform」ポートフォリオの強化について取り組みの最新成果が示された。
データマネジメントのためのAIエンジン「CLAIRE」の強化
データマネジメントの主要7分野が単一のプラットフォームに統合されているのが売りのIntelligent Data Platformだが、その基盤部分には、モニタリングと管理、コネクティビティ、データエンジンなどのレイヤが備わっている。その中で、インフォマティカが最新の差別化要素として訴求するのが、2017年に発表したAIドリブンなメタデータレイヤを構築する「CLAIRE(クレア)」だ。
CLAIREは、データベース、ビックデータ、業務アプリケーション、クラウドプラットフォーム、ファイル/ファイルシステムなどとの接続によりメタデータを収集・管理し、そのうえで、データ統合、類似性、タグ付け、レコメンデーション、異常検出などの処理、AIによるインテリジェンスを加える。会期中発表された最新版のSpringリリースでは、データカタログ、ガバナンスなどの分野での適用範囲が広がっている。
インフォマティカの最新ポートフォリオで可能なこととして、チャクラヴァーシー氏は「クラウドとハイブリッドのデータ管理、データガバナンスとコンプライアンス(規制順守)、アナリティクス、360度のエンゲージ」などを挙げる。
例えば、360度のエンゲージは、多種多様なシステムに分散している顧客データを集めて統合し、顧客に対してタイムリーでかつ全方位のエンゲージメントを可能にする取り組みだ。初日のパネルディスカッションに登壇した米ニューヨーク州バッファローに本拠を置くM&Tバンク(M&T Bank)は、コンプライアンスとマーケティング強化の目的でInformatica MDMを導入した。同行では導入前までは顧客のアカウントを閲覧するのに、さまざまなシステムにアクセス・検索をかける必要があったが、MDMの導入により1度のアクセスでそれが可能になり、カスタマーエクスペリエンスを向上することができたという。同行は現在、リアルタイムコミュニケーションでもMDMを活用し、エンゲージメントのさらなる強化に取り組んでいる。
「クラウドの利用が進み、企業はサーバーもストレージも所有しなくなってきている。所有しているのはデータだ。データこそが宝であり、エンドツーエンドで包括的に運用・管理する必要がある」とワリア氏。そうした時代に、企業はシステムに対する思考(System Thinking)も新しくする必要があると訴えた。具体的には、(1)データをプラットフォームとして考える、(2)最初からスケールを念頭におく、(3)メタデータの重視、(4)AIの活用、(5)ガバナンス、セキュリティ、プライバシーの5つをデータマネジメントの方針に入れる必要があるとし、これを「System Thinking 3.0」と呼ぶ。
AzureにiPaaSをネイティブ統合
もちろん、データマネジメントだけでは顧客のデジタルトランスフォーメーションは完了しない。インフォマティカはデータマネジメント/データ統合のベンダーとしての姿勢を明確にしたうえで、その先の顧客のデータ活用に関しては中立の立場から、ISV、SI事業者、OEM、ディストリビューター、リセラーなど、合計500以上の企業で構成されるパートナーエコシステムを醸成している。
今回、パートナーの1社としてステージに上がったのが米マイクロソフト(Microsoft)だ。同社クラウド・AIグループ エグゼクティブバイスプレジデントのスコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏が登壇し、Intelligent Data Platformと「Microsoft Azure」の組み合わせで、顧客の成功をより短期で実現できる」とアピールした(写真3)。
両社の協業による新たな発表もなされた。Azureの管理ポータルとiPaaSのInformatica Intelligent Cloud Services(IICS)」のネイティブな統合だ。これにより、Azureのユーザーが、主要なデータウェアハウス(DWH)システム製品との接続、データカタログを利用した移行対象データの発見といったIICSの能力を活用できるようになる。
デモでは、AzureポータルからIICSを起動し、数クリックでIBMのDWHシステム「IBM Netezza」からマイクロソフトのクラウドDHWサービス「Azure SQL Data Warehouse」へのマイグレーションを実行するさまが披露された。Informatica Data Accelerator for Azureがデータを発見(Discovery)し、SQL Data Warehouseに読み込む、ディスカバリーベースのアプローチによるDWHマイグレーションがポイントとなっている。
今回のイベントに先立って、マイクロソフトはSQL Data Warehouseの新しいパフォーマンスレベルオプション「Compute Optimized Gen2 tier」を発表している。インテリジェントなキャッシュ機能によってクエリ性能が10倍になるなど高速化され、実装コストを抑えながら高速なDWHを利用できるという触れ込みだ。